2015年1月12日月曜日

禁輸という暴政

オバマ米大統領とキューバのカストロ国家評議会議長は先月、両国が国交正常化交渉を開始すると表明した。米政府は国民のキューバへの渡航や貿易などを制限する措置の一部を撤廃する方針という。これに対し米国内の政治家やメディアから、独裁国家との融和政策などと批判する声が出ている。しかしそもそも政府が国民に対し、特定の相手との貿易を禁止することは、自由を侵害する暴政である。

オバマ大統領の方針に対し、米議会では野党・共和党だけでなく与党・民主党からも異論が相次いだ。共和党のマケイン、グラハム両上院議員は「独裁者、悪党、敵への融和政策であり、世界での米国の影響力を小さくさせる」と批判した

こうした意見に対し、ミーゼス研究所の編集担当者、ライアン・マクメイケン(Ryan McMaken)は疑問を投げかける。「キューバ政府が残忍な政府であることに疑いはない。けれどもなぜ、キューバ政府が残忍だと、キューバの人々と貿易しようとする民間の米国市民を米政府が投獄・迫害してもよいということになるのだろうか」

マクメイケンは書く。禁輸措置を支持するということは、市民が平和裏に自由な取引をしようとするとき、政府が彼らに罰金を科し、起訴し、投獄するのを支持するということである。税関の役人が貿易商と顧客を監視するのを支持し、どの貿易が合法でどの貿易が違法かという政府の勝手気ままな判断に抵触する人々を罰するのに必要な強制執行手続き一式を支持するということである。

マクメイケンはここで、米財務省外国資産管理局が定めるキューバ禁輸措置の具体的な内容を紹介する。そこには次のように定められている。「規則違反への刑事罰は最長10年の禁固刑、法人には最大100万ドルの罰金、個人には同25万ドルの罰金。さらに最大6万5,000ドルの民事罰が科されることがある。キューバと取引のある者(旅行者を含む)は5年間の記録を残し、外国資産管理局の求めがあれば、それらの取引に関する情報を提供しなければならない」。自由な国のルールとは言いにくい。

「禁輸措置は重商主義時代への先祖返りである」とマクメイケンは批判する。16世紀から18世紀にかけての重商主義時代、経済政策は国際問題の道具とみなされ、少なくとも部分的には、自国政府に利益をもたらすよう立案されなければならなかった。

しかし米国を独立に踏み切らせたのは、まさにこの種の経済政策だった。当時、植民地の米国人が貿易を認められたのは、英王室に利益をもたらすとみなされた国や地域だけだった。自由を求める人々は北米東部で広範な密輸をおこない、課税を回避し、民主自由主義のお手本とはいいがたい絶対王政時代のフランスやスペインと貿易をおこなった。

禁輸による経済制裁は、政府が期待する効果をあげにくいと言われる。しかしそれ以前に大切なのは、禁輸措置が自由な社会になじまないことだとマクメイケンは強調する。「私有財産権を重んじる社会はいうまでもなく、禁輸措置など受け入れず、市民が自身の判断で財産を処分する権利を尊重する」。そして痛烈にこう述べる。
私有財産をこと細かに統制し違反者を投獄するのは政府の特権だと信じる人々は、政府がそのようなことを積極果敢にやれるような国に行けばよい。たとえば、キューバに。
国民の自由を抑圧する共産主義国は許せない、だから経済制裁の手を緩めるな――。日本でも対北朝鮮についてよく耳にする意見である。しかしその行き着く先に現れるのは、北朝鮮のように自由の失われた日本自身の姿だろう。

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