2015年5月31日日曜日

共産主義を笑えるか

先閣諸島を巡る日本とシナの対立は、自由主義と全体主義という価値観の対立であるという解説をよく目にする。しかし今の日本に、自由を擁護する価値観が根づいているとはとても思えない。

それは「反中」言論人の主張を見ればわかる。2010年に出版され、最近また本屋で平積みされている三橋貴明『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』(ワック)で、著者の三橋はシナの共産主義体制を非難する一方で、自由の抑圧に羨望を隠しきれない。

三橋は「そもそも中国共産党は『国民を豊かにする』ことを目標に国民経済について考えない」と述べ、彼らが考えているのは統計上の経済成長率を達成することのみだと批判する。

ところが自分自身、シナに劣らず、統計上の経済成長率を高めることばかり考えている。ケインズが広めたマクロ経済学の教義を疑いもせず、公共投資はGDP(国内総生産)を直接増やす効果があるので、現在のような不況時には政府は積極的に「財政出動」すべきだと力説する。

たしかに公共投資は数字の上でGDPを増やす効果がある。だがそれは計算式がそうなっているからにすぎない。どのような投資をおこなうかは、国民の自由な選択でなく、政治判断で決まるから、国民の多数が真に求めるサービスを供給できない。だから国民を豊かにしない。しかも原資は税金である。

つまり公共投資とは、国民から強制的に取り上げた財産を政府が都合よくばらまく行為であり、自由主義の価値観とは相容れない。そのような行為を推奨する三橋の思考は、共産主義のシナ政府と本質的に変わらない。

実際、三橋はシナの全体主義を心底忌まわしいとは考えていない。そうでなければ、シナ政府が銀行に融資拡大を強制したことについて「正直……聞いた瞬間、著者は思わず『この手があったか!』と膝を打ってしまった」と軽薄にも書いたり、政府が公共投資を増やすと野党やマスコミがすぐ無駄遣いだと批判する日本と違い、一九三〇年代のナチスドイツや現在のシナでは「誰かがケチをつけようものなら、何か理由をでっちあげ、逮捕収監してしまえば済む話」と羨ましそうに述べたりはできまい。

公共投資を熱心に説いたマクロ経済学の祖ケインズは、ナチス支配下で出版された主著『一般理論』ドイツ語版への序文で、自分の理論は自由主義国よりも「全体主義国の条件にずっと適合しやすい」と記した。教祖自身があけすけに認めるとおり、経済への政府の介入を当然と考える思想は、自由主義に反する。ケインズ流の介入思想のいかがわしさに鈍感な日本人に、シナの共産主義を笑う資格はない。
(2012年11月)

2015年5月30日土曜日

TPPでなく自由貿易を

反日デモでも過去最高の売上を達成。常連客の意外な一言
 鵜呑みにしてはいけない反日デモ報道。中国人常連客はこう話したそうです。「デモが起きているけど、私は日本のアニメ嫌いにならないし、日本のアイドルも嫌いにならない。『アース ミュージック&エコロジー』も嫌いになりません」

歴史問題で日中韓に異例の苦言シンガポール首相
 日本は一般的な謝罪はしたものの、「慰安婦や南京大虐殺については、はっきりしない態度をとってきた」と正しい指摘。学問的には認定されている事実でも、政府には政治的理由からどうしても認めたくない事柄があるものです。

朝日新聞は「戦後70年謝罪談話」を出せ
 笠信太郎の件はどうだか知りませんが、朝日は『新聞と戦争』『新聞と「昭和」』などの大型連載で、戦争のお先棒を担いだ反省をしており、大手メディアでは最も良心的です。政府に反省を迫る資格はあるし、反省を迫ることこそ過去の過ちを繰り返さないため必要です。


派遣自衛隊員の自殺者数を公表 イラクで29人、インド洋25人
 海外派遣が原因なのか、それとも自衛隊という組織そのものに原因があるのか。いずれにせよ、安倍さんが胸を張って「我が軍」と呼べるような状態ではないようです。

We Need Actual Free Trade, Not the TPP
 環太平洋経済連携協定(TPP)が自由貿易だと信じている人は、日本だけでなく米国でも少なくないようです。それは大きな勘違いだとエコノミストのライアン・マクメイケンは指摘します。
 TPPが推し進めるのは貿易自由化とは似ても似つかぬ、政治の中央集権化です。貿易政策の交渉・実施を少数の規制担当者や官僚の手に任せ、その一方、連邦・州議会の権限を弱めます。貿易は合意の一部でしかないため、秘密交渉のもと、環境政策やインターネット、移民政策などあらゆる決定が不透明で独裁的になっていくでしょう。
 選挙で選ばれていないエリートが秘密の交渉をおこなうことで、貿易障壁の引き下げが規制担当者と親しい一部の企業のためになされるのは想像に難くありません。しかしこの縁故主義を自由貿易と混同してはならない、とマクメイケンは注意を促します。
 本物の自由貿易とは、貿易政策を個人レベルにまで完全に分権化することです。TPPや北米自由貿易協定(NAFTA)のような協定は、貿易をおこなう判断を個々の市民ではなく、政府の規制・交渉担当者に任せます。彼らの意思決定は、政府とその利害関係者のためにおこなわれます。
 米国民がほしい物を自由に買うためには、NAFTAもTPPもいりません。政府がなすべきは、海外企業と取引しようとする市民を罰しないことだけです。それこそが真の貿易自由化であると、マクメイケンは強調します。ミーゼス研究所のコラムより。

2015年5月29日金曜日

軍人は英雄か

米FRB、年内に利上げ開始の公算 景気上向きへ=SF連銀総裁
長期金利はもちろん、短期金利の水準も本来市場が決めるべきものです。しかしもはや私たちは、中央銀行がそれを決める体制を当たり前だと信じ、中銀関係者に高額の講演料を払ってでも彼らの思わせぶりな話を聞きたがるのです。

ギリシャのユーロ離脱、通貨統合の本質変える=ムーディーズ
ユーロは単一通貨だから悪いのではなく、ドルや円と同じ不換通貨だから問題なのです。金銀との兌換を復活しない限り、ギリシャが離脱しようとしまいと、通貨危機のリスクは消えません。

個人番号カードで医療情報など一元管理へ
アマゾンやグーグルに個人情報を知られるのは嫌だと騒ぐのに、それが政府だと「便利になっていいね!」と喜ぶ声が上がるのは、何なんでしょうか。

安倍総理「早く質問しろ」と野次「総理大臣以前に人としてどうなのか」枝野幹事長 - 民主党
女性が輝く日本へ、という美しいキャッチフレーズは、自分を批判する女性議員には適用されないようです。

Airbnbが大手ホテルのライバルになる日
すばらしいサービス。ただし日本では旅館業法違反でつかまります。国家という制度は時代遅れなのです。

The Military’s “Heroes” and the Scourge of Nationalism
 軍人は英雄としてしばしば称えられます。しかしそれは正しいでしょうか。米国のエコノミスト、アビゲイル・ホールはそう問いかけます。
 英雄がほめたたえられるのは勇敢、勇気などの気高い資質のためです。しかし軍隊にはこの基準にあてはまらないどころか、正反対な者もいます。米軍内ではレイプ、性的暴力、肛門性交の強要が絶えないし、軍の基地とその周辺は、安全と「アメリカの価値観」の灯台であるとの触れ込みとは裏腹に、犯罪発生率は米国有数です。
 兵士は自由を守るといいます。しかし軍出身者は、国内監視や特殊火器戦術部隊(SWAT)など米国民の自由を脅かす組織の設立を支持してきました。
 兵士は日々危険に直面するから英雄だといいます。しかし実際に戦闘に出会う軍人は一部でしかありません。多くはデスクワークに従事しています。1990年から2007年までで軍人の死亡率は10万人あたり71.5人で、木こり(127人)や漁師(117人)を下回っています。
 軍人を無条件に英雄とみなすことは、さまざまな弊害をもたらします。第一に、真の英雄の功績をおとしめることになります。第二に、兵士を戦場に送る国民の良心の呵責をまひさせます。第三に、軍服を着ているだけで英雄扱いされることに慣れると、軍人はそれをあたりまえだと思い込んで傲慢な態度をとるようになります。
 たしかに軍隊には英雄の名にふさわしい人物はいます。しかし軍人全員を等しく英雄扱いすれば、批判的な考察への道をふさいでしまいます。軍隊はその行動を問われなければならない。ホールはそう正しく指摘します。インデペンデント研究所のブログより。
 日本人もロマンチックな戦争観に酔っ払うのでなく、理性に基づく軍隊批判が必要です。

2015年5月28日木曜日

税控除は補助金にあらず

「子猫、10年間で100匹殺して埋めた」 室蘭の72歳女、愛護法違反容疑で逮捕
 愛猫家にはショッキングでしょうが、だからといって法律で罰するべきでしょうか。道徳的に悪だとしても、法的に罰することとは別問題です。なんでも政府に罰せさせることの危険に無頓着な人が多すぎます。

みずほ行員「 巨額詐欺」事件――初公判で語られた「エリート行員の転落人生」
 個人ができもしない投資話でカネを集めると詐欺で逮捕されますが、政府がインフレ政策で公的年金を実質デフォルトしても何も責められません。

うその業績見通し公表後に自社株売却し利益か
 補助金をだまし取るのは悪いことですが、「正しく」獲得された補助金が震災復興に役立っているかどうかは別の話です。

株価好調の裏で現実味を帯びてきた「預金封鎖」が起こるシナリオとは?
 公的債務増大→利払い増加→大量のマネー増発→大幅インフレ→国民の預金引き出し→預金封鎖→資産没収。これが悪夢のシナリオ。

高い成長率は原油安の効果でありアベノミクスの成果ではない - 野口悠紀雄
 政府・日銀の主張とは反対に、物価上昇率が高まれば実質消費が減少し、低まれば増加している。「つまり、インフレ目標は誤りだ」とズバリ。


No, Tax Breaks are not Subsidies
 特定の産業を対象とする税控除は、政府による補助金と同じだと非難されることがあります。しかしその意見は間違っているとエコノミストのマット・マカフリーはいいます。
 税控除とは、自分の収入を取り上げられないことです。一方、補助金は、政府を通じて他者の収入を奪うことです。二つはまったく異なるものです。
 免税や税の抜け穴は富を強制的に再配分しません。これに対し課税と補助金は、一部の生産者の犠牲によって他の生産者を潤します。
 税控除を受ける企業がそうでない企業よりも負うコストが小さいのは事実です。しかしだからといって、免税や税の抜け穴による利益が不公正だとはいえません。事実は逆です。不幸にも税控除を受けられない企業が、課税によって罰せられるのです。
 免税や税の抜け穴は、富の再配分という海における救命胴衣だとマカフリーはいいます。経済学者ミーゼスはこんな名言を残しています。「資本主義は税の抜け穴から息をする」

2015年5月27日水曜日

ポピュリスト政権の4段階

TPPの戦略的重要性増す日本、AIIB創設の動きで
 TPPの内容が国民に隠されたまま議論が進んでいることに、米国内でも批判が強まっています。漠然とした「国益」の正体はたいてい政府関係者と関係業界の「私益」だと相場が知れています。

首相 健保負担引き上げに理解求める
 悪いことをしたわけでもないのに、自分が入っていない保険の赤字の穴埋めをさせられるサラリーマン。なんという理不尽。しかしこれが国家という組織の仕組みなのです。

7年10か月ぶり円安ドル高水準に
 昨日は1メートルが100センチだったのに、朝起きると120センチになっている。それが変動相場制という奇妙な制度です。自由な市場経済とは何の関係もありません。

首相、自衛隊員のリスクを明言 野党批判で軌道修正
  自衛隊員に命の危険があるのは当たり前だろうという乱暴な議論が目立ちますが、それは誤りです。いまの自衛隊員は、安倍政権が解釈改憲で集団的自衛権を認めることを承知して入隊したのではないのですから。日本を守るために自衛隊に入ったのに、米国を守るために死ねといわれるのは約束していないリスクです。 企業ならすぐブラックと批判されるような約束違反に、政府だと甘い人が多いのは困ったものです。


The Bait-and-Switch Behind Economic Populism
 南米のベネズエラやアルゼンチンに代表されるポピュリスト政権には共通点があるという分析の紹介です。ポピュリスト政権は次の4段階を経るといいます。
 《第1段階》 不景気を背景にポピュリスト政権が登場し、経済問題に診断をくだす。マクロ経済政策により国内総生産(GDP)の伸び、失業の減少、実質賃金上昇などの成果をあげる。
 《第2段階》 経済成長が制約されはじめる。なぜならポピュリスト政権は投資よりも消費を優先するからである。物価の一部が上昇しだすが、政府は支出と財政赤字を抑えられない。
 《第3段階》 物不足が深刻になり、物価騰貴が加速する。国の通貨は国内取引だけに使われ、国民は貯蓄を米ドルでするようになる。経済活動の停滞により税収が減り、財政赤字が拡大する。実質賃金が下がり、政治・社会が不安定になりはじめる。ポピュリスト政策の失敗が明らかになる。
 《第4段階》 ポピュリスト政権に代わる新政権が、場合によっては国際通貨基金(IMF)などの監督の下、伝統的な緊縮政策をとるよう強いられる。
第4段階には続きがあります。政権を退いたポピュリスト政治勢力は、ポピュリスト時代のほうがよかったと主張し、新政権を批判する。新政権の伝統的な引き締め政策やそれがもたらす不況に不満な有権者の支持を得て、政権に返り咲く――。というものです。あとは第1段階からの繰り返し。やれやれ!
 ただし、より大胆なポピュリスト政権は、選挙の延期や投票数のごまかしなどにより、第4段階での退陣を避け、政権にとどまる可能性もあります。こうなるとその国はもう、完全な独裁国家です。日本も他人事ではないかもしれません。

2015年5月26日火曜日

ユーロを兌換通貨に

キャッシュレス決済、ついに現金を上回る:英国
 キャッシュレス比率が高まるものの、まだ52パーセントは現金決済。電子通貨は政府が一瞬で捕捉できますが、現金はできない。利用者は賢明といえます。

古賀茂明氏の被害妄想が世界に拡散する
 NHKの政治討論番組に与野党から暗黙の圧力はつねにあるが、政府が介入したことは一度もない、と池田さん。それは悪賢い政府が直接介入を避け、与党を通じて間接介入しているというだけの話です。そうすれば評論家が「政府の介入はない」と擁護してくれますから。

ドローン、危険ばかり挙げて過剰規制の愚かさ ビジネス化で大きく世界に遅れる懸念
 自動車産業の黎明期、一時は世界をリードしていながら、政府の規制で衰退させてしまった英国。1865年に導入された「赤旗法」では、なんとふつうの人が歩くスピードより遅く走ることを義務づけたそうです。
 それから150年。日本政府はドローンに対して愚かな規制をかけようとしています。政府関係者の頭は進歩を知らず、社会の進歩を遅らせています。

対ロシア経済制裁で、アメリカの圧力を認めた日本 - 下院議長
 日本の政治家たちは、日本が反ロシア・キャンペーンに加わったのは米国の圧力によるものだと認めており、将来におけるロシアとの対話の重要性は理解している――。訪日を終えたロシアのナルイシキン議長が記者団にこう語ったそうです。日本の政治家の口からは直接出てこない話。「マスコミに載らない海外記事」より。

Should We Dump the Euro?
 ギリシャ問題を受け、欧州単一通貨ユーロを廃止し、以前の各国別通貨に戻るべきだという意見も聞かれます。しかしエコノミストのフランク・ホレンベックはそれに異を唱え、「ユーロが問題なのは共通通貨だからではなく、不換通貨(金貨や銀貨との兌換が保証されていない通貨)だからだ」と指摘します。
 不換通貨は政府が無制限に刷ることができます。このままいけばハイパーインフレは避けられないとホレンベックは警告します。
 それを防ぐ方法は、ユーロを金と交換できるようにすること、つまり金本位制の復活です。ホレンベックは、ドイツを中心とするユーロ圏北部の諸国が、ユーロを金との兌換通貨にするべきだと提案します。
 一方、イタリアやフランスなど南部諸国では引き続き、ユーロは不換通貨のままでしょう。これらの国では国民がより大きな政府を求めているので、金本位制による緊縮政策は認められそうにありません。ホレンベックはこう言い放ちます。「それなら欲しいものをくれてやればよい。価値のない通貨を」

2015年5月25日月曜日

権力を求める無能力者

カネのためなら不正も。金融危機から学ばぬウォール街
 強欲は金融業者に限らず、程度の差はあれ、あらゆる人間に共通する性質です。そうでなければ聖書の十戒の対象になるはずがありません。問題の核心は金融業者がなぜ強欲かではなく、なぜ金融業やその他一部の業界に限って強欲が抑制されず、社会に害悪をもたらすかです。キーワードは政府の保護。

「ゲーム理論」でノーベル賞、映画モデルともなった米数学者が事故死ジョン・ナッシュ氏、同乗の妻も死亡
 幕切れも劇的な生涯。ナッシュ氏が金融危機への処方箋として、マネーの氾濫を抑える金本位制の復活を提唱していたことは、あまり知られていません。
http://legacy.fordham.edu/campus_resources/enewsroom/Archives/2008/archive_1377.asp

幸福の国ブータン 揺れる幸せの定義
 幸福は個人の主観によるものですから客観的には測れません。比較も合算もできません。さて、自由の束縛ですら幸福と感じる人はいるでしょう。私の幸福がそのような人々の幸福と比較・合算可能ならば、私は政府から「社会全体の幸福を高めるためにお前は自由をあきらめろ」と命じられるリスクがあります。いや現に命じられ、累進課税をされています。それは文字どおり全体主義です。

「ドローン」出現で一番損するのは富裕層?
 上空からの盗撮で個人、とりわけ大邸宅に住む富裕層のプライバシーが丸裸になるとの指摘。たしかに困った問題ですが、解決策があります。住宅の所有者に住宅上空の私有を認めるのです。私有地ならぬ「私有空」に侵入したドローンは、警備会社が撃ち落とすかつかまえてくれるでしょう。

Collective Causes and Freedom
 5月21日は米国の社会哲学者エリック・ホッファー(1902-1983)の命日でした。7歳のときに失った視力を15歳で奇跡的に回復。沖仲仕として肉体労働に従事しながら独学し、『大衆運動』などの本を著しました。ミーゼス研究所のブログで、自由を擁護したホッファーの言葉が多く紹介されています。一部抜粋。
  • 自由を見分ける基本はおそらく、何かをする自由よりも、何かをしない自由にある。
  • 私たちが平等を声高に求めるのはおもに、自力でうまくやれない事柄についてである。
  • 自由な雰囲気の中で多くをなしとげる能力のない人々は、権力を声高に求める。
  • 虐げられた人々が自由のために闘うかどうかは疑わしい。彼らが闘うのは誇りと、他人を虐げる権力のためである。
  • 絶対権力はたとえ人道的目的のために行使されても腐敗する。みずからを人民の羊飼いとみなす慈愛に満ちた独裁者であっても、他人に羊のような従順さを求める。
紀伊國屋書店
発売日 : 2003-02-18

2015年5月24日日曜日

浅ましき排外主義

経済について的外れなことを書く論者の多くは、経済の競争がまるで暴力的な争いや戦争と同じようなものだと思い込んでいる。作家・橋本治の本、『その未来はどうなの?』(集英社新書)に、その典型例がある。

橋本は環太平洋経済連携協定(TPP)加入について論じた第七章で、「輸出で物を売りつけるということは、相手国の競合する業種に攻撃を仕掛けるということ」と書く。まず「物を売りつける」という表現がおかしい。暴力をちらつかせた押し売りででもない限り、売買は売り手、買い手双方の自発的な合意に基づいておこなわれるものである。

かりに貿易自由化が外国政府の圧力によるものだとしても、日本人消費者に外国製品を無理やり買わせることはできない。もし日本で外国製品が売れたとしたら、それは日本人がその製品を欲しがったからであり、売った側を非難するような表現は不適切である。

外国業者が日本に製品を輸出すると、国内業者に「攻撃を仕掛ける」ことになるという表現もおかしい。国内業者が外国業者との競争に敗れたとしたら、その結果をもたらしたのは外国製品を選んだ消費者であり、外国業者をあたかも侵略者のように書くのは不適切である。

もしそのような表現が正当ならば、たとえば橋本が書いた本が多く売れ、他の作家の本がそれほど売れなかった場合も、同様に表現してよいということになる。この『その未来はどうなの?』は発売翌月、インターネット書店アマゾンの「イデオロギー」という分類で百冊中一位だったから、さしづめ橋本は他の九十九冊の著者を殱滅せんばかりの勢いで、大々的に「攻撃を仕掛け」たわけである。好戦的なことよ。

また橋本は第八章で「相手に勝つためにはぎりぎりまで経費を削減する」企業の行動を槍玉に挙げ、「儲かるのは、経営者と投資家くらい」と述べる。しかし企業が経費を削る最大の理由は、少しでも製品の値段を安くし、消費者が買いやすくするためである。だから経営者と投資家が儲かるためには、まず消費者が得をしなければならない。経営者と投資家だけが儲かるなどというのは嘘である。


企業の目的は軍隊と違い、「敵」を打ち倒すことではない。消費者により良く奉仕することである。競争相手が「敗れる」のは結果にすぎない。ところが多くの人は経済競争を戦争と混同し、外国企業を「鬼畜米英」のごとく憎悪する。

それは人間心理に根強い排外主義の現れである。日頃は排外主義やその近代的発露であるナショナリズムに批判的な言論人までが、経済が絡むとたちまち本性を現すのは、何とも浅ましい。
 (2012年9月)

2015年5月23日土曜日

戦争はペテンだ

消費のカギ握る年金生活者、日銀に「ジレンマ」も
インフレ政策が年金生活者にはプラスどころか生活を圧迫することは以前から言われていたことです。何をいまさら。

憲法の前文で日本を現し、国家元首も明記しよう!
憲法は国家権力から個人の自由を守るという本来の役割に専念すべきです。堀さんが提案する「国家のグランドデザインを示し、国や社会の基本的価値観を描く」ことは国家権力を強化するので、憲法本来の役割と矛盾します。

「ドローン少年」を金銭的に支援の男性、「25万円振り込んだ」
以前も書きましたが、米軍の殺傷兵器ドローンを放置しておいて、ラジコンみたいな小型ドローンに大騒ぎすること、馬鹿馬鹿しいの一言です。

司法試験:合格目標1500人政府案半減
弁護士を国家資格とすることには反対ですが、国家の横暴に対し敢然と闘う一部の弁護士には大いに敬意を抱きます。立派な弁護士をめざす志ある若者が国家の制度いじりに翻弄されるのはほんとうに気の毒です。

安倍首相:アジア投資3割増を表明…インフラ5年13兆円
日本だろうが中国だろうが、政府に投資判断の能力はありません。長期にわたる投資ならなおさらです。いわんや質の高い投資なんて。

世界の富裕層と貧困層の格差、過去最大レベルに OECD報告
「富裕層と多国籍企業にも確実に税負担を負わせる政策が必要だ」とOECD。将来、税奴隷解放が成就したあかつき、この文書は政府の悪辣さを示す証拠の一つとして法廷に提出されるでしょう。

「再エネ産業」が終わる日 ~『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より
再生エネルギー普及のカギは発送電分離と小売りの自由化。既存電源にこだわらず、安い新規参入者の電気を買う動きが広がるから。このように政府に頼らない新エネルギーの普及なら大いに支持します。

戦没将兵記念日は欺瞞だ
 5月25日は米国の戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)。米国民は学校で、戦死者は米国民と米国民の自由のために戦ったのだと教えられます。しかし米海兵隊少将スメドレー・バトラーはその考えに異議を唱えました。米兵は、銀行家、証券会社、スタンダード石油やユナイテッド・フルーツ社の利益のために死んだと暴露したのです。
 戦争にロマンチックなあこがれを抱く人はぜひ、バトラーの小冊子『戦争はペテンだ』を読んでみるべきです。

2015年5月22日金曜日

幸福は比較できない

“ドローン飛ばす”と動画を配信 少年逮捕
 暴力を振るったり脅したりしたわけでもないのに、祭りの主催者にドローン禁止の張り紙を作らせ警戒を強化させたから、威力業務妨害の疑いで逮捕。こんなことがまかり通ったら、たとえばデモなんてできなくなります。

厚切りジェイソン「仕事を効率悪くやる人にご褒美をあげる残業制度がある限り日本企業はグローバルで勝てない」
 年功序列とかサービス残業そのものより、企業にそういう行動をとらせる法制度の変革が必要です。記事の最後の指摘のように。「思い切って古臭い労働基準法を変えてしまったほうがいい。法律というルールを変えないと企業は絶対に変わらない」

カナダ議員、コイン投げ制し再選 同数得票で
 いっそ、選挙を最初からすべてコイン投げでやったらどうでしょう。お金もかからないし、政治の腐敗も減るでしょう。

ゴミについたDNAから顔を復元、ポイ捨てした人をポスターにするキャンペーン
 協力した米企業は犯罪ツールとして開発したそうですが、なぜか支援しているのが国防総省。あなたの顔がテロリストとして街頭に突然さらされる日も遠くないかもしれません。

ポツダム宣言「本当に読んでないようだ」志位氏が皮肉
 日本がポツダム宣言を「黙殺」したから原爆を落とされたという説がありますから、原爆のあとにポツダム宣言が出されるはずはないですね。やっぱり歴史の授業は神話とかじゃなく近代から始めたほうがいい。

ポール元米下院議員が金融危機再来を警告
 リーマンショックのあった2008年とは比べものにならないほど破滅的な金融危機が米国を襲い、社会不安や株価の暴落を招くとミスター・リバタリアンが警告。ポール氏の経済知識はミーゼス、ハイエクらオーストリア学派の理論に裏打ちされたもので、笑って済ませることはできません。



Can We Compare People’s Utilities?
 経済学でいう「限界効用逓減の法則」は、政府の再分配政策を正当化するため利用されることがあります。ビル・ゲイツのような大富豪は1ドルを失っても痛くもかゆくもない。一方、極貧の人にとって1ドルをもらうことはとてもうれしい。だから政府は金持ちから課税で財産の一部を取り上げ、貧しい人に渡すべきだ。そうすれば社会全体の効用が増える――という具合に。
 しかしその考えは誤りだとオーストリア学派エコノミストのロバート・マーフィーは言います。なぜなら個人の効用はあくまで主観的なものであり、他人と比較することは不可能だからです。つまり課税で金持ちの失う効用(味わう不幸)が、貧乏人の得る効用(味わう幸福)より小さいかどうかは、誰にもわからないのです。もちろん、政府にも。

2015年5月21日木曜日

欧州5つのバブル

ビットコイン信用力アップに躍起「銀行並みの安全性」
 ビットコインの弱点は取引履歴を追跡されやすいこと。政府や大銀行とのかかわりが強まることで、その弱点が大きくなるのが心配です。

新財政中長期試算、国債平均金利は成長率以下に抑制必要=政府筋
 国債金利をどうやって抑え込むかと記事を読んだら、案の定、「日銀の協力も必要」。これでは量的緩和政策の出口は永遠に訪れません。

JPモルガンなど大手5銀行に制裁金57億ドル、外為相場不正操作
 金利や為替を操作していいのは中央銀行だけ!

社畜を作る方法
 社畜という言葉はあるのに、どうして「国畜」という言葉はないのでしょうか。東京五輪などの税金を使った国民行事や勲章のほうが、よっぽど悪質です。

まず「価格」を先に決めなさい 俺のフレンチ、いきなりステーキ、小米に共通の成功法則
 デフレは悪いという神話が蔓延する日本では、物を高く売る戦略ばかりが語られ、値段を下げる努力こそイノベーションの原動力であり、社会を豊かにする王道であることが忘れられています。記事で引用された松下幸之助の「水道哲学」を噛みしめるべきです。「産業人の使命も、水道の水のごとく物資を豊富にかつ廉価に生産提供することである。それによってこの世から貧乏を克服し、人々に幸福をもたらし、楽土を建設することができる。わが社の真の使命もまたそこにある」

著者 : 松下幸之助
PHP研究所
発売日 : 1968-05

デンマークから現金がなくなる!?世界中が注目するその戦略とは?
 デンマーク政府は、財務省が推進する経済成長施策のひとつとして「現金清算の義務」を一部で廃止するとのこと。早ければ2016年の1月には、キャッシュレスのガソリンスタンドやレストランが現れるとのことです。
 しかしキャッシュレス化の強制は、個人が支払い方法を選ぶ選択の自由を狭めますし、取引に関するプライバシーが政府に侵される恐れがあります。便利でスマートというだけで賛成する気にはなれません。

5 bubbles that Draghi’s QE is already blowing
 欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和を推し進めるユーロ圏のあちこちで、バブルが生じているようです。マーケットウォッチが挙げる5つは次のとおり。
▼スペインの建設
 前年同期比で12%の伸び。
▼アイルランドの住宅
 住宅価格は同16%の上昇、首都ダブリンでは22%の上昇。
▼ドイツの賃金
 強い経済にもかかわらず過去10年ほとんど上がらなかった賃金が上昇。金属労組は3.4%の賃上げを確保。列車運転手はストライキの末、5%の賃上げと時短を獲得。
▼マルタの不動産
 前年同期比の値上がり率は10%とユーロ圏で2位。一時のキプロスと同じく、ユーロ圏内の短期資金が集まったためとみられる。
▼ポルトガルの株式
  実体経済がたいして改善していないにもかかわらず、今年すでに25%値上がりし、世界屈指の強気相場。
中央銀行は好きなだけお金を刷ることができますが、その行方をコントロールすることはできません。もし上記の現象がバブルだとすれば、それらがはじけたとき、欧州はもちろん世界経済への影響が懸念されます。

2015年5月20日水曜日

米国株、ネットバブル以来の割高水準

佐藤優講演録(1)ピケティが読めないのは、数学のせいではない
 佐藤さんによれば、マルクス主義者の河上肇ですら言わなかった国家による再分配を、ピケティは主張。究極的には国家の廃絶をめざしたマルクスがピケティを読んだら激怒するかもしれません。

教員数の削減は、逆行している
 民間なら市場の需要に応じて人数を調整できるのに、政府はできません。教員にとっても子供やその親にとっても不幸でしかありません。

大阪都構想、老人だけが反対して改革が頓挫したことが判明
 国民全体でまとまって政府の国家福祉体制に反対しなければならないときに、世代間の感情的対立を煽る人たち。政府を喜ばせるだけです。

日本犯罪の件数・検挙率を調べた
 市場原理主義の猛威が社会を無茶苦茶にしたはずなのに、犯罪は減っていますね。おかしいぞおかしいぞ!

外国人客:3割増加臨時ボーナス出るほどニッポン下支え
 高級品人気にはバブルの危うさも感じますが、政府から押しつけられる日本人同士の「きずな」より、自由な商取引を通じて他国人とのつながりが深まるのは良いことです。

財務省が「国立大の授業料」の値上げを提案!私立大近くまで引上げ
 教育サービスの内容にかかわらずほぼ一律にしか授業料を設定できない以上、さまざまな不満が生じるのは当然です。政府と教育を切り離さない限り問題は解決しません。


都市のスラム化をどうやって止めるか
 安価な賃貸住宅の供給は大切ですが、それを政府が補助すれば住宅市場がゆがみます。インフラ整備が政府の仕事というのは幻想です。鉄道も電力ももともと民間事業だったのですから。

Nobel Winner’s Math Is Showing S&P 500 Unhinged From Reality
 史上最高値を連日更新する米国株。しかし株価が企業の実体価値からかけ離れていると懸念する声もあります。
 ノーベル賞経済学者ジェームズ・トービンが考案した投資指標に、「Qレシオ」があります。株価を1株あたり実質純資産(純資産に含み資産を加えたもの)で割った値をいいます。株価がその裏づけとなる企業の実質資産に対しどれくらい割高・割安かをみる指標です。
 ブルームバーグの報道によれば、現在の米国株はQレシオでみて適正値より10%割高とのことです。インターネット・バブル、大恐慌直前の1929年を除けば、Qレシオがこれほど高くなったことはないそうです。リスクへの備えを怠るべきではないでしょう。

2015年5月18日月曜日

中銀信仰が崩れるとき

「増税先送り」「賃金増」のまやかし
 安倍政権誕生直後の2年前と比べると今年3月の実質賃金は約4%のマイナスとみられ、消費増税の影響を除いてもマイナス2%程度。政府の主張とは裏腹に悪化する国民生活。

財政健全化の行方「混とん」、4─5兆円の歳入改善で対立
 歳出増に慎重な財務省も、せいぜい歳出の伸びを抑えましょうというだけで、減らせとは言っていません。事ここに至っても、使うカネを減らすとは絶対に言い出さない政府関係者に、財政再建は無理です。

来年は今年より貧しくなる社会をどうするか
 「貧しい社会にならないようにするには?」「国民に巨額の課税をしましょう!」。これがベーシックインカムというすばらしい仕組みだそうです。

嫌なら出ていくしかない、この国から。 - 西村博之
 国家の強制による福祉制度は国民の間に助け合いの精神を養うどころか、世代間の憎悪すら生んでいます。選挙年齢の引き下げで若者の政治力を強めても、感情的対立に拍車をかけるだけです。元凶は国家福祉そのものです。

太陽光買い取りに入札導入へ 政府、再生エネ制度を抜本見直し
 反原発派の人々の一部は太陽光発電に望みを託しましたが、政府の補助がなければやっていけないのでは、原発と変わりません。政府の介入を排し、自力で持続できる電力ビジネスを築くべきです。

安保法案:本当に撃てるのか…防衛大卒55歳記者は聞いた
 日本を守るとは、誰を守ることなのでしょうか。日本政府か、日本国民か。政府を守ることが必ずしも国民を守ることにならない場合もあります。心ある自衛官は、この矛盾に悩むことがきっとあるはずです。


台湾の輸入規制が許せない本当の理由
 痛烈な皮肉です。「ニッポンの最高責任者である総理様が『汚染水は完全にブロックされ、コントロールされている』と証言している。総理様がウソをつくことはあり得ない。これが、わが国産品が安全であることの何よりの科学的な証拠である」

The Debt To GDP Ratio For The Entire World: 286 Percent
 マッキンゼー・グローバル研究所の報告書によると、世界の総負債(政府と民間の合計)は2007年末の142兆ドルから現在では199兆ドルに増加したそうです。対GDP比率は269%から286%に上昇しています。同報告書では次のように指摘します。
 「大恐慌以来最悪の金融危機をまねいた世界的な信用バブルの破裂から7年、負債は増え続けている。実際、主要国は借金圧縮(デレバレッジ)どころか、対GDP比でみると2007年当時の水準よりも借金を増やしている。全世界の負債はこの7年で57兆ドル増え、対GDP比率を17ポイント高めた。これは金融の安定に新たなリスクをもたらすとともに、世界の経済成長を弱める恐れがある」
 借金の増加がとりわけ目立つのは中国です。同国の負債は2007年以降、不動産ブームとシャドーバンキング(影の銀行)に煽られて、7兆ドルから28兆ドルへと4倍になりました。
 カナダのグローブ・アンド・メール紙でも世界の負債問題について解説しています。2008年初め、政府の負債は企業、家計、金融機関よりも小規模でした。しかし今ではそれらを上回っています。
 同紙の取材に対し、ベルリン在住のアナリストで、『グローバル負債の罠』(2011年)の共著者であるクラウス・ヴォート氏はこう話します。「現在の状況は2000年や2007年よりも悪化している。金利がゼロかその近くまで低下し、中央銀行は〔不況と戦う〕武器を使い果たしてしまった。さらに負債全体、とりわけ政府の抱える負債はこれまでになく増大している」
 続けてヴォート氏は、あらゆる投機バブルはなんらかの「おとぎ話」の上に成り立つと述べたうえで、こう警鐘を鳴らします。「現在のおとぎ話は、世界の中央銀行は中央指令型経済を実行する能力があるという信仰だ。米連銀や欧州中銀などへの信頼が失われ始めたとき、株式・債券から資金がいっせいに逃げ出すだろう。金融史上きわめて重要なこの瞬間は、ひじょうに近いと考えている」
 以上、「経済崩壊ブログ」より。

2015年5月17日日曜日

不安定の元凶は政府

市場経済は本質的に不安定で、それを安定させるのが政府の役割だと多くの知識人は説く。しかしそれは嘘である。政府こそが経済や社会を不安定にする。

京大教授の佐伯啓思は『経済学の犯罪』(講談社現代新書)で「国内の雇用や経済を安定させるものは政府以外にない」と述べ、したがって「市場経済がそこそこうまくゆく」には、「市場が著しく不安定化した時に、これを支える『国家』が、市場の外部になければならない」と言う。

だが市場経済そのものに、不安定になる理由はない。佐伯自身が触れているハイエクが述べたように、市場は「人間の合理性や理性に極度に依存せずとも自ずから安定した秩序を生成しうる」からである。経済を不安定にするのは、安定をもたらすと信じられている政府である。


たとえば佐伯は、資本の移動が「過度に自由化され流動化され」た結果、投機マネーが横行し、「金融はバブルとその崩壊を繰り返」すようになったと嘆く。しかしそもそも、手に負えないほど膨大なマネー(現金・預金)を生み出したのは誰なのか。言うまでもなく、政府の一部門たる中央銀行である。現代において現金を刷ることができるのは中央銀行だけだし、銀行による預金の創造を金融政策で操作するのも中央銀行である。

政府は経済を安定させるためと称し、公共事業、社会保障、ときには金融機関や大企業の救済に多額の予算を注ぎ込むが、税収だけでは足りないので、国債を発行して資金を集める。その国債も民間だけでは消化しきれないので、中央銀行が自分でマネーを捻り出し、それで買う。中央銀行による国債の直接引受はたいてい禁じられているが、民間から買い取るのはお咎めなしである。

こうして膨れ上がったマネーが暴走し、バブルを引き起こす。つまり政府・中央銀行こそが経済を不安定にする元凶なのである。それを市場経済のせいにするとは濡衣もはなはだしい。

また政府が企業を救済すれば、経営者は「どうせ政府が助けてくれる」と舐めてかかり、過大なリスクをとるようになるから、結局経済の不安定につながる。公共事業は、それに依存する労働者が成長性のある産業に転職するのを妨げるから、政府予算が苦しくなり事業を維持できなくなれば、労働者は路頭に迷う。

佐伯は「〔市場経済の〕無秩序を支える権力がなければならない」と言うが、事実は逆である。市場経済こそが自由と規律を通じて社会に秩序を形成し、政府の権力はそれを破壊する。「自由は秩序の母であって、娘ではない」と説く無政府主義者プルードンの方が、佐伯よりよほど経済や社会を理解している。(2012年10月)

2015年5月15日金曜日

救命ボートなき世界経済

“ブラック企業” 是正勧告回数一定以上で公表へ
 この規制の結果、何が起こるかは明らかです。大企業は労働コストが増す分、業績が悪化し、社員の給与は減るでしょう。リストラや採用減もあるでしょう。労働条件は法律で画一的に決めるのでなく、労使の合意で決めるべきことです。
 なお、企業にはブラック、ホワイト、その中間がありますが、政府にはブラックしかありません。もし企業が借金返済のため社員の給料をピンハネしたらとんでもないブラック企業として非難されるでしょう。ところが政府はそれを課税という手段で堂々とやっているのです。

安保法制を閣議決定 安倍総理が“必要性”を強調
 「日本人の命と平和な暮らしを守るための法案だ」という安倍さんの説明になんとなく安心した皆さん。太宰治の「家庭の幸福は諸悪のもと」という言葉を思い出しましょう。


安保法制関連法案に対する日本の人々の反対
 米国防総省は先週、30億ドル相当の新型輸送機オスプレイ17機を日本に売却することを承認。これが安保法制と無関係だと信じるナイーブな人はいないでしょう。

サウジアラビアはイエメンの内乱を話し合いで解決することを嫌い、国連の調停を破壊する空爆実施
 ブログ「櫻井ジャーナル」より。1971年のニクソン・ショック(ドルと金との交換停止)から生まれたペトロダラー(オイルマネー)。金という保証をなくしたドルを安定させるため、米国はサウジアラビアをはじめとする産油国と1974年に協定を結び、石油取引をドルで決済させることに。産油国が石油取引で得た利益で米国債などを買わせてきました。
 代わりに米国は協定国を軍事的に保護し、武器を供給、支配層の地位を保証してきました。「日本も似たような協定を結んでいる可能性がある」と同ブログでは指摘します。

ドイツ連銀総裁、ギリシャ流動性支援の拡大を批判
 欧州中央銀行(ECB)がギリシャの銀行向けの緊急流動性支援を週ごとに拡大していることについて、バイトマン独連銀総裁が厳しい目を向けたそうです。
 「財政ファイナンス(中央銀行による国家財政支援)の禁止条項を踏まえると、市場にアクセスできない銀行が融資を受け、(これが)やはり市場へのアクセスを持たない政府の国債をファイナンスしている状況には問題があると思う」(独紙報道)。 大量の国債買い入れに実質的な財政ファイナンスとの批判が出ている日銀にも聞かせたい意見です。


Draghi hits back at argument QE fuels inequality
 もうひとつECBの話題。低金利政策、特に量的緩和は貯蓄家を痛めつけるだけでなく、富裕層に不釣合いな恩恵をもたらし不平等を拡大するとの批判に対し、ワシントンで講演したドラギ総裁が反論したそうです。
 若い世帯は純債務者であることが多いため(デフレで)実質負担が重くなる。一方、年配の世帯は富が増えやすい。したがってインフレが目標に達しないと、若い世代から年配の世代に富が再配分される――。総裁はこう主張し、リフレ政策を正当化したとのことです。
 しかしお金の貸し借りはそれぞれの人の自発的な意思にもとづいてなされたものですから、経済情勢の変化によって予想外に実質的な負担が増えたからといって、政府がそれを助けてよい理由にはなりません。もし社会主義の国でなければ。
 それよりも、ドラギ総裁は都合の悪いことを口にしていません。インフレ政策で一番助かる純債務者は、ふつうの人々ではなく、膨大な借金を背負った政府です。リフレ政策とは、まじめに貯蓄に励んできた国民から、野放図に国債を刷り散らかした政府に富を移転する手段なのです。

HSBC WARNS: The world economy faces a 'titanic problem'
  大手銀行HSBCのチーフエコノミスト、スティーブン・キング氏が顧客向けメモでこんな警告を発したそうです。「世界経済はまるで救命ボートのない外洋船だ。もし新たな景気後退が襲えば、政策決定者にとってはまさに巨大な〔沈没したタイタニック号の船名とかけている〕困難となるだろう」
 キング氏はその理由をこう説明します。「これまでの景気回復では金融・財政政策決定者は〔景気後退と戦う〕武器を補充することができたけれども、今度の回復はそれと違って、米国でも他の国でも、武器が絶えず不足している。これは大きな問題だ」
 同氏は景気後退が起こりうるきっかけとして、「賃金上昇による企業収益の悪化」「保険や年金の不足を埋め合わせるために人々が金融資産を取り崩す」「中国経済と人民元、新興国経済の崩壊」「米連銀の利上げ」などを挙げています。ビジネス・インサイダーの記事より。

2015年5月14日木曜日

TPPと政府権力

受刑者をIT起業家に 米国の刑務所でプログラマー育成
 良い試みですが、一歩進めて、犯罪の被害者が承諾すれば、21年も刑務所に入れず最初から社会で働き、そこから賠償金を払うほうが、税の無駄もなく、被害者の救済にも犯罪者の更正にもプラスです。プログラマーになりたければ自分で勉強してなればいい。

山東省で「金融危機」、銀行11行が政府に緊急支援要請
 借金でかさ上げされた世界景気に小さなシグナル。

訪問や電話の勧誘96%が望まず 規制検討へ
 この対策にどれだけ税金がかかるか知りませんが、嫌がっている人のところに無理やり押しかければ企業イメージを落とすだけですから、放っておけばいいのでは。ようするに余計なお世話。

LINEで弁護士に無料相談できるサービスを開始
 弁護士はサービス業。利用者のニーズを汲んだサービスがもっと増えることを期待します。もちろん値引きはその有力な手段。

海外で働いて気付いた「働き過ぎる日本人は素晴らしい!」
 モーレツ社員は別に悪くありません。しかし日本人サラリーマン全員がモーレツ社員でなければならない、という考えは誤りです。

人民元改革、脱ドル依存に主眼=行天元財務官
 ドルに取って代わる気はないにせよ、ドルに次ぐ地位を占めたいとは十分に野心的。中国にそう言われてしまうドルのかげりをあらためて感じます。その事実を日本の元財務官がはっきり語ることからも。

安保法制、閣議決定へこれまでと異なる2つのポイントとは?
 テロとの戦いをやってもテロがなくならないどころかむしろ増えることが明らかになった今、テロとの戦いに積極的に協力する体制を整えてどうするのでしょう。

ちっとも失われていなかったこの20年―国富の推移は、どうなってきたのか
 土地の値下がり分を除けば国富は増加を続けており、私たちは日々の努力に自信をもってよいとの興味深い指摘。もしそうだとすれば、金融緩和政策は土地バブルを生んだだけのいらないお世話だったということに。

台湾、日本からの食品輸入すべて停止協議物別れで15日から実施
 日本自身の輸入規制がすべて科学的根拠にもとづいてきたわけでもないのに、台湾だけを非難しても説得力はありません。米国産牛肉、残留農薬基準、遺伝子組換え表示などなど。http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1639

Ten Things You Need to Know About Fast Track
 米議会上院で5月12日、米大統領に強い通商交渉権限を委任する貿易促進権限(TPA、通称ファストトラック)法案の審議入りを巡る動議が否決されました。 法案の成立を前提とする環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に暗雲が立ち込めた形です。
 否決に先立つ4月27日、保守系オピニオンサイトのタウンホールで、コラムニストのマイケル・ハモンドが「ファストトラックについて知っておくべき10のこと」という記事を書いています。列挙された10項目のうち一部を抜粋します。
  • ファストトラックとは、根本的には、オバマ大統領とその後任大統領への立法権限の重大な移譲である
  • もしファストトラック法案が承認され、貿易合意がひどいものだとわかっても、そのときになって止めることはできない
  • 大統領の権限を制限することはどうやってもできない
  • ファストトラックは、貿易合意の中身が全然わからないにもかかわらず、オバマ大統領と(おそらく後任となる)ヒラリー・クリントン氏に、合意について議会を完全に避ける力を与える
  • TPPの広範な知的財産権保護は、オバマ大統領に献金した映画業界に多大な見返りをもたらす
  • ファストトラック法案が議会を通過する前に、米国民がTPPの全容を見られるようにするべきである
日本と同様、米国でもTPPの内容は国民に秘密にされたまま交渉が進んでいるようです。ファストトラックは、大統領にTPPの交渉権限を与え、大統領が交渉して決めた内容を議会に送り批准するものですが、その際、修正は一切認められず、「イエス」か「ノー」のどちらかの投票をすることしかできません。大統領が議会の立法権限を事実上譲り受け、議会のチェックを受けなくなることも、権力分立の原則に反します。
 知的財産権の過剰な保護など、TPPがめざすものは自由貿易の精神とは縁遠い保護政策といわざるをえません。そればかりか、政府権力の肥大をまねく危険をはらんでいます。

2015年5月12日火曜日

誰が金を持っているのか?

ユーロ圏財務相会合:ギリシャ支援再開見送り
アジアインフラ投資銀に対抗して「質の高い」投資基準をうたうIMFの巨額融資先はここです。

法科大学院、15年春の入学また最低2201人で倍率2倍切る
政府の政策の誤りが学生の正直な選択によって明らかになった。それがせめてもの救いです。

米利上げ時期、事前周知すべきでない=連銀総裁
2012年のFOMC情報漏れ疑惑が取りざたされる中でこの発言。一部の者にだけ情報を事前に知らせるのはやめてほしいものです。

救急車:「有料化」提案財務省、軽症者対象に
救急サービスを民営化すべきです。いまも民間救急はありますが、規制で用途が制限され、高額です。競争が広がれば料金は下がり、多様なサービスが可能になります。医療保険のオプションにする手もあります。


ピカソ絵画、史上最高215億円で落札
量的緩和政策で買うものがなくなった某国中央銀行が落札したとの噂。(ウソです)

Who’s Got the Gold?
 金融ブログ「インターナショナル・マン」より、「誰が金(きん)を持っているのか?」というタイトルの記事。米国は、ニューヨーク連邦準備銀行の地下とケンタッキー州フォートノックス陸軍基地にある連銀の金庫におよそ8,000トンの金を保有していると主張していますが、連銀の金は1953年以来、監査を受けていません。「8,000トンか。4,000トンか。ゼロか。この疑問に対するほんとうの答えは得られそうにない」
 一方、中国。「中国人民銀行(中央銀行)はいわれるように2,500トンの金を保有しているのか。それとも5,000トン、あるいはそれ以上か」(ブルームバーグは4月21日、中国の金保有は前回公表した2009年4月から3倍となり、3,510トンになった可能性があると報じています)
 金の保有量は意味のない話ではなく、いずれ訪れる通貨崩壊から、どの国が立ち直るかを決める、と記事は強調します。新たな国際金融体制を決める交渉の場が国際通貨基金(IMF)になるのか、アジアインフラ投資銀行(AIIB)になるのか、それ以外の経済組織になるのかにかかわらず、「未来は金を一番多く持つ国のものになるだろう」

2015年5月11日月曜日

ハイパーインフレでも大丈夫?

「育児」は「ブラック企業勤務」と同じか? 「賛成VS反対」熱い議論
 ブラック企業への最善の対策が労働市場と起業の規制緩和であるのと同じく、育児問題への最善の対策はベビーシッター業の規制緩和です。民営化反対論者は「子どもの命を守れ」といいますが、規制はむしろ母子を苦しめています。

「家族はすばらしい」は本当? 日本を覆う過剰な“家族信仰”の呪縛とは
 家族を持ちたい人は持てばいいし、持ちたくない人は持たなければいい。それに尽きます。心得ておくべきは、自分が気にくわない他人の生き方を政府という暴力を使って邪魔しないことだけです。

教員免許を国家資格に 自民が政府に要請へ 共通試験や研修で資質向上
 教師は教育というサービス業のプロです。プロの能力に国家資格は関係ありません。人材不足に拍車をかけるだけの規制強化です。

ベネズエラ政権、人権弾圧強める国連も懸念表明
 反対派弾圧の原因は政府の経済政策に対する抗議。経済の自由がない国では、やがて言論の自由も封殺されます。

When Hyperinflation Hits In Japan, Robot Suits Will Help You Move Your Yen
 三井住友銀行グループのSMBCデリバリーサービスは先日、作業支援用ロボットスーツを金融機関として初めて導入すると発表しました。同社は現金の集配金などを行う会社で、おもに三井住友銀行の各店舗へ搬送する現金などの仕分けを担当。ロボットスーツにより、高齢の従業員などが重い現金を運ぶ際、体にかかる負担を軽くできるそうです。
 金融ブログのゼロヘッジは、「日本をハイパーインフレが襲っても、ロボットスーツが円を運ぶのを助けてくれるだろう」と皮肉っています。

2015年5月10日日曜日

国防論、いまだ人間不在

「人を殺せば犯罪であるのに、戦争で人を殺すことはどうして犯罪といわれないのか」。元航空幕僚長で軍事評論家の田母神俊雄は『ほんとうは危ない日本』(PHP新書)で、このような問いを呈する人があると述べ、それにこう答える。「答えは単純で、国家がそう決めたからだ」。田母神は読者と自分自身を欺いている。

田母神によれば「何が犯罪であるか決めるのは国家」であり、したがって「戦争で人を殺すことは、国家の行為だから犯罪ではない」という。なるほど犯罪を法律的な意味に限れば、人を殺しても、国家が存在しなければ犯罪と認定されることはないし、国家が犯罪でないと言えば犯罪にならない。馬鹿馬鹿しいほど当然である。だがそのような無意味なことをわざわざ尋ねる者はいない。

答えるべきは、道徳的な「犯罪」についてである。日常では、何の危害も加えない人間をむごたらしく殺す行為を私たちは道徳的におぞましいと感じる。それが戦争になると不問に付されるのは奇妙だというのは、誰もが自然に抱く疑問であろう。だが田母神は意識してか無意識にか、その問いから逃げている。

道徳と政治を峻別せよとは半面の真理だが、道徳的問いを忘れて政治を正しく論じることはできない。国際法の先駆者といわれるヴィトリアは中世スペインの神学者であり、キリスト教道徳にもとづいて正しい戦争とは何かを論じた。ヴィトリアは「君主は間違う可能性があるから、君主が正しいと思うだけでは正しい戦争とは言えない」「国民はその戦争が不当だと良心的に思うならば、戦争に参加すべきではない」といった主張とともに、「罪のない人々を意識的に殺すことは決して許されない」と断じた(ヨンパルト『自然法と国際法』)。


ヴィトリアの思想は近代国際法に受け継がれ、今でも西洋の心ある軍人はそれを気にかけずにいられない。日本への原爆投下について、米海軍大将リーヒは「あれを最初に使うことによって、われわれは暗黒時代の野蛮人並みの倫理基準を選んだことになると感じた。あのように戦争を遂行するようには教えられなかったし、女、子供を殺すようでは戦争に勝利したとは言えない」と嘆き、連合軍最高司令官アイゼンハワーは「この新型兵器について言われているような恐ろしく破壊的なものをアメリカが最初に戦争にもちこむことなど見たくない」と漏らした(アルペロビッツ『原爆投下決断の内幕』上巻)。

もちろんリーヒもアイゼンハワーも、政府に仕える軍人としては原爆投下を承認せざるを得なかったが、個人としては道徳的な問いから逃げなかったのである。

田母神は日本の核武装を説くが、核攻撃とは「女子供」を無差別に殺傷することであり、これ以上の道徳的罪悪はないであろう。しかし田母神は「実際に使うとか使わないとかいう議論ではな」いなどと言葉を濁し、ここでも答えるべき問いから逃げている。道徳と向き合わない「人間不在」の国防論とは、いい加減に訣別すべきである。
(2012年7月)

2015年5月9日土曜日

欧州を牛耳る者

国の借金、3月末に最大1053兆円 財務省が発表
国には借金だけでなく資産もある、不安を煽るなという意見がよくありますが、資産の中身が問題です。道路や橋を売ってカネになるとは思えませんし、米国債を売れば自分のクビを締めるだけでしょう。

ドイツの情報機関、ヨーロッパでNSAのスパイ活動を手伝っていた疑い
ドイツは米国のスパイ活動を責めていたけど、自分もやってるじゃん!米国悪くない!日本もやらないと!…と考えたあなたは、すでにスパイのプロパガンダに乗せられているかもしれません。

安倍総理のアメリカ議会演説は、日本の歴史への侮辱だ
正しい指摘。「ISIL(イスラム国)が誕生した根本的な理由は、アメリカによる、大量破壊兵器の隠匿というデマを根拠にした、国際法的に許されないイラク攻撃」

NSAの大量監視に違法判決:スノーデンの正しさを証明 愛国者法の先行きは不透明に
大量の通話記録収集は「前例がなく、正当性がない」と連邦控訴裁が全員一致の判決。国民を外敵の脅威から守るという名目でおこなわれる政府の行為はほとんどの場合、むしろ内側から国民の権利を脅かします。


Nigel Farage Quits as UKIP Leader
 移民規制や欧州連合(EU)離脱を唱え一時旋風を巻き起こした英独立党(UKIP)のファラージ党首が、英総選挙で落選しました。ファラージ氏は落選を受け、党首を辞任すると表明しました。
 ファラージ氏は主流派の政治家が口に出さないタブーをあけすけに語るところに好感が持てました。たとえば2014年1月15日、欧州議会での討議でこう語っています。
 「ギリシャは今や外国に支配されています。何も決められず、借金を尻ぬぐいしてもらい、ギリシャ自身が最初に考えだした民主主義を放棄しました。……私たちをいま牛耳るのは大企業、大銀行、大官僚組織なのです」

2015年5月8日金曜日

オフショア銀行の危機

結婚「コスパ悪い」 「恋愛の価値」低下
 記事に登場する人は持参金目当てではないのですから、狭い意味での「損得勘定」という表現はやや不適切です。ただし経済的な損得勘定はほとんどの人がしているし、すべきです。経済的に破綻した結婚生活で幸福になるのは、不可能とはいわないまでも難しいからです。

世界遺産登録反対の韓国と政府間協議へ
 たとえば八幡製鉄所は日清戦争(朝鮮半島が戦場となった)の賠償金で建てられ、日露戦争(これも朝鮮半島が主戦場)に鉄を供給しました。その後の韓国併合は結果にすぎません。政府の反論は苦しいのではないでしょうか。 韓国政府は強制徴用を反対理由としているとのことですが、より本質的な問題は、明治の重工業が朝鮮侵略に加担した(面があった)ことです。
 歴史学者の原朗氏は『日清・日露戦争をどう見るか』(NHK出版新書)で、 ともに朝鮮半島が戦場となり、戦争の目的も朝鮮の支配だった日清・日露の二つの戦争は、「第一次・第二次朝鮮戦争」と呼ぶほうがふさわしいのではないか、と問題提起しています。


仏アレバ原子炉事業売却交渉、価値査定の不一致で暗礁=関係筋
 アレバが原子力エンジニアリング部門の価値を10億ユーロと見積もるのに対し、EDFの買収提案額は2億800万─3億ユーロと大きな開き。どちらも実質国有企業なのに、EDFが情け容赦ない安値を提示したのは興味深いことです。

A Powerful Weapon of Financial Warfare—The US Treasury’s Kiss of Death
 金融ブログ「インターナショナル・マン」の記事からです。スペインとフランスに挟まれた小国アンドラは欧州連合(EU)に入っておらず、EUのさまざまな規制から自由な国です。通貨統合にも参加していませんが、ユーロが一般に使われています。中央銀行はありません。税率を低くして海外の資金を呼び込むオフショア銀行業が盛んで、銀行業は観光業に次いで二番目に大きい収入源となっています。
 しかしアンドラの有力銀行の一つ、BPAは最近、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)から、経済的な「死の接吻」を受けました。ロシア、中国、ベネズエラの個人のマネーロンダリング(資金洗浄)に加担したかどで非難されたのです。興味深いことに、いずれも米国と地政学的に対立する国です。
 FinCENの非難からまもなく、BPAが海外銀行と資金決済する口座は閉鎖されてしまいました。どの銀行もブラックリストに載った相手と取引して米政府の怒りを買いたくないからです。追い討ちをかけるように、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はアンドラの銀行業へのリスクが高まったことを理由に同国の信用格付けを引き下げました。
 米政府は2013年にも同様に、スイスの老舗、ヴェーゲリン銀行を閉鎖に追い込んでいます。「米当局はあちこちのマネーロンダリング摘発を楽しんでいるようだが、ニューヨークやロンドンが一番活発なマネーロンダリング拠点であることはけっして口にしない。非難の本質が犯罪ではなく、政治にあることは明らか」と記事は批判します。
 政治的立場の弱い小国のオフショア銀行は、このままでは存亡の危機に立たされるかもしれません。

2015年5月7日木曜日

軍を疑うべからず?

株式バリュエーションの高まり、米FRB議長「潜在的危険」警告
 株高を招いたのは連銀自身の金融緩和。それなのに市場に「警告」とは、アリバイ作りのためとはいえ、白々しい限りです。リスクを小さくするには早めに引き締めに転じるしかありませんが、それができるかどうか。

投資ファンドの日本企業買収・出資が最多
 投資ファンドを媒介とする事業再構築は良いことです。しかし投資の条件が金融緩和政策のせいで甘くなっている恐れもあります。量が増えれば良いわけではありません。

日本の観光競争力、世界9位 世界経済フォーラム発表
 日本は観光資源や安全などで総じて評価が高いものの、価格競争などの点で低評価。財布にやさしくないサービスは、すぐれた「おもてなし」とはいえません。

オリコン50年「ランキングに不純物は入れたくない」
 オリコンは民間企業であって政府の研究所ではありません。「不純物」とそうでないものをCDという形式で判別するのは、それなりに明快な線引きです。ランキングはビジネスの根幹にかかわるのですから、信頼性が乏しいと考えれば修正するでしょう。

4月マネタリーベース、300兆円の大台突破=日銀
 お金の山が雲の上までどんどん積み上がる。崩れたらケガじゃ済まなそう。

 J・ロジャーズ氏「北朝鮮に全力投資もあり」
 あらためて持論を展開。米国ですら社会主義独裁国家キューバとの関係改善に動いているのに、何もできずにいる日本政府には、ロジャーズ氏のように大胆な発想は望むべくもありません。


Rick Perry: Don't Question The Military
 7月15日から9月15日まで米国の15の州でおこなわれる予定の軍事訓練「ジェイド・ヘルム15」。目的などが詳しく伝えられないことから、「戒厳令の準備ではないか」などと巷間さまざまな憶測を呼んでいるようです。
 このような状況について、大統領選に出馬したこともあるリック・ペリー・テキサス州知事(共和党)が次のように軍を擁護したそうです。「政府を疑うのは問題ない。……〔しかし〕軍隊は違う。……わが国の軍隊は非常に信頼できる。……文民指導部〔=政府〕をたえず疑うのはいい。しかし軍服の男女〔=軍人〕を疑ってはいけない」
 いやはや。もしこれがほんとうなら、いっそ政府から文民を一掃し、軍に政治を任せたほうがいいかもしれません。

2015年5月6日水曜日

最低賃金30%アップを喜ぶ人々

なぜ長州のテロは成功したのか『明治維新という過ち』
 革命を起こすには危険思想が必要だと池田さん。しかし古い権力を新たな権力にすげ替えるだけの革命ならば、意味はありません。権力そのものを否定する真の危険思想が求められます。

マツコ・デラックスが最近の日本における自画自賛の風潮に苦言
 富士山が世界遺産になって日本の誇りだとか喜んでいる人は、「富士山は我々がこしらえたものじゃない」という夏目漱石『三四郎』の言葉を思い出しましょう。


Venezuela Raises Minimum Wage 30 Percent
 経済危機が深刻なベネズエラで、マドゥロ大統領が最低賃金を30%引き上げました。同大統領は先日、販売業者に値上げを禁じる物価統制を敷いたばかりです。
 企業が値上げを禁じられる一方で、従業員に払う最低賃金を30%以上引き上げるよう求められたら、経営状態はどうなるか。結果は火を見るより明らかです。
 ところが現地の写真によると、大統領の支持者は喜んで通りを練り歩いています。「大衆は大統領の狂った経済政策が大好きだ」とジャーナリストのロバート・ウェンゼルはあきれた様子です。

2015年5月5日火曜日

人種問題の不都合な真実

安倍首相が語る「女性の輝く社会」とは
 政府の指導的地位に就く女性の割合の目標を立てるよりも、政府を小さくして指導的地位そのものの数を減らすほうが、男女を問わず国民の福利向上につながります。

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産へ 今夏に正式決定
 鉄鋼・造船・石炭業が中心であることからも明らかなように、明治の産業革命は軍備拡張と帝国主義を抜きには語れません。『坂の上の雲』流の明るいだけの明治像にはもううんざりです。

国会議員もTPP極秘案閲覧へ 政府が容認、守秘義務徹底
 協定案の内容を知らずに、議員はどうやって是非を判断するつもりだったのでしょうか。国民はなぜ知ることができないのでしょうか。自由と対極の秘密主義。TPPが市場経済と無縁の縁故資本主義の産物であることは容易に想像がつきます。

CIA元職員 アルカイダとの戦いにおける情報機関の失敗について執筆
 米政府は、国際テロ組織アルカイダの潜在能力や、ウサマ・ビンラディンの死後、アルカイダが中東で再びその立場を強化する可能性を非常に過小評価した――。CIA(米中央情報局)元副長官のマイケル・モレル氏が著書で指摘したそうです。「日本版CIA」新設の機運が政府・自民党で高まっていますが、米国ですら免れなかった官僚主義の弊害を日本で避けられるとは思えません。

Race, Politics, and Lies
 米サウスカロライナ州で4月4日、丸腰の黒人男性が白人警官によって射殺される事件が起き、ニューヨーク、ロサンゼルスなどで抗議デモがおこなわれました。昨年8月にはミズーリ州ファーガソンで同様の事件があり、抗議から暴動や略奪に発展しました。
 しかしその一方、「完全に無視されている事実がある」と経済学者トマス・ソーウェルは指摘します。それは上記の例とは逆に、丸腰の白人男性が黒人警官によって射殺された事件です。これは2012年にアラバマ州で起きました。くしくもミズーリ州の事件で裁判所が白人警官を不起訴処分としたのと同じ昨年11月、アラバマ州の黒人警官も不起訴処分となっています。
 黒人であるソーウェルは、米国社会では真実でなく、かたくなな先入観がすべてになっていると批判します。そして「黒人による犯罪の原因は貧困と人種差別にある」との一般的見方に対し、1960年以前、黒人は現在よりはるかに貧しく、人種差別は悪質だったにもかかわらず、黒人居住地での暴力犯罪はずっと少なく、犯罪率はむしろ低下していたという「不都合な真実」を指摘します。
 犯罪が増えた原因は1960年以降、政府の福祉政策によってひとり親家庭が増えたことにあるとソーウェルはいいます。

2015年5月4日月曜日

納税者に感謝なし

自由と平等の国フランスの、「不」自由で「不」平等すぎる就職活動
 中産階級の優秀な子弟向けにつくられたはずのグランゼコールが、いまでは権力者の試験場に。エリート主義が権力とのなれ合いを意味するのであれば、亡国の道としかいえません。

「働かない正社員」をクビにできる世の中に――オリックス元会長の意見をどう見る?
 正論です。ただし日本企業全般にいえることとして、株主が経営者を解雇しやすくするような制度見直しも同時に必要です。買収防衛策で保身を図るなどはもってのほかです。

アジア開発銀、改革急務AIIB台頭、日本「質」強調
 インフラ整備なんて民間でやれることを政府でやるのですから、どっちみちろくなことにはなりません。どちらが民間の努力をより邪魔しないかという尺度で点数をつけるべきでしょう。

工場の夜景、街再生の切り札に静岡・富士市の挑戦
 富士市の製紙工場といえば、記事にもあるように70年代にヘドロ公害の元凶として叩かれ、住民と対立。それが街再生の切り札とはえらい変わりようですが、ともあれ工場を追い出さなかったのは賢明でした。

無人ヘリで田植えさらば ヤマハ発動機、イネ種まき実演
 いけませんね、これは! 危険物質を積んでxxとかxxとか(自主規制)の上に飛ばされたらどうします。ダメ、絶対。たとえ日本農業が滅びようとも。

憲法は時代遅れなのか、誇るべき理念なのか 各地で集会
 憲法には9条以外の条文もあるのに9条だけ話題にするのはおかしいという議論があります。しかしそれは物事の軽重を無視した意見です。現代社会において人間の自由に対する最大の脅威は戦争だからです。現憲法には経済的自由を十分保障していないなど様々な短所がありますが、国家の戦争権を公然と認めるくらいならば、現状維持、つまり護憲が賢明です。憲法は政府の権力を縛り、個人の自由を守るために存在することを忘れてはなりません。


Taxpayers bailed out GE Financial in 2008, Now GE is selling off GE Financial, No “Thank You” to taxpayers
 先日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が売却を発表した同社金融部門。2008年のリーマンショックで経営危機に陥り、生き延びるため政府に600億ドルにのぼる債務保証を付けてもらいました。万が一の場合のリスクを納税者に負わせたのです。
 GEは今回の売却で浮いた資金を使い、最大900億ドルの株主還元を実施する方針を表明しました。しかし「納税者への感謝の言葉はなかった」。ブログ「反縁故資本主義」がそう指摘しています。そりゃそうですね、納税者に感謝なんかしたら、株主だけが得をして納税者に何の見返りもないのはおかしいって話になりますから。
 なお同ブログの記事では、GE幹部にいかに元政府幹部が多いかを示す図を載せ、同社と政府の親密ぶりを批判しています。

2015年5月3日日曜日

右も左も国家主義

「目糞鼻糞を笑う」という言葉があるが、経済論壇もご多分に漏れない。いや、経済問題の背後にあるイデオロギーの存在に自覚のない論者が多いだけに、己が欠点に気づかず他人の同じ欠点をあざ笑う滑稽な主張は、むしろ他の分野よりも大手を振ってまかり通っている。

たとえば経済評論家の上念司は、三橋貴明との共著『「日本経済ダメ論」のウソ』(イースト・プレス)でこう述べる。「いまの団塊の世代の連中の多くは昔、左翼運動をやっていたような連中ですから、もともと国営化が大好きです」。上念が右翼かどうか知らないが、自分も左翼と同じことを言っている自覚がないのは間違いない。なぜなら同じ本の中で、不況克服のため百兆円程度の「復興国債の日銀直接引受」をやれと強く主張しているからである。

日銀が国債を大量に引き受けることができるのは、日銀が事実上の国営銀行で、通貨を無からいくらでも作り出せるからである。上念は日本航空の実質国営化を左翼的発想とあざ笑うが、もしそうなら、「経済の血液」である通貨の発行を国家が独占することはそれ以上に左翼的なはずである。事実マルクスとエンゲルスは『共産党宣言』で、革命の方策の一つとして「国家資本および排他的独占をもつ国立銀行によって、信用を国家の手に集中する」ことを挙げている。

保守系メディアによく登場する経済学者の丹羽春喜は、国債の日銀直接引受を一歩進めた「政府貨幣」の発行を提言する。マルクスでさえ政府と中央銀行はいちおう別組織と考えていたのに、政府が直接通貨を発行せよというのだ。丹羽がインターネットで公開した文章によると、政府貨幣は国民に負担をかけず「数百兆円、数千兆円の発行も可能」な「打ち出の小槌」だそうである。

だが国民に負担をかけないというのは嘘である。上念も丹羽も、日本は物の生産能力が余っているから、どれだけ通貨を発行しようと物価高を招く心配はないと強調する。しかし物価高に至らなくても、発行量を増やせば、そうしなかった場合に比べ通貨の値打ちが落ちることに変わりはなく、国民が蓄えた預貯金の価値を損なう。土地や株のバブルももたらす。


米国大統領のジェファーソンやジャクソンは通貨発行独占の害悪を理解し、中央銀行制度に強く反対した。米国で中央銀行(連邦準備銀行)の設立が1913年と遅かった(日銀は1882年=明治15年)のは、反中央銀行の知的伝統が存在したためである。さすがに現在米国で中銀廃止論はごく少数派だが、そうした発想そのものが皆無に等しく、右も左も国家主義のイデオロギーに盲いた日本に比べれば、まだ健全といえる。
(2012年6月)