2016年7月20日水曜日

石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』



雇用改善は良いことか

政府は経済政策の成果として雇用の改善を誇る。しかし雇用とは消費者を満足させるためにあり、人為的な雇用改善は社会を良くしない。ときに礼賛されるヒトラーの雇用政策の内実を本書で知れば、それがよくわかる。

著者によれば、ヒトラーの雇用政策の独自性は3つ。いずれも人為的に労働力の供給を減らし、統計上の失業者を減らす狙いがあった。第1に、若年労働者の供給を減らすため、若者に公益事業の勤労奉仕を義務づけた。

第2に、女子労働者の供給を減らすため、結婚奨励貸付金制度を導入し、女子就労者を家庭に戻した。出産すれば子の数に応じて返済額が減免される。「失業者の削減と出生率の向上という二つの目的をもつ政策」である。

第3に、徴兵制を再導入した。1935年以降、毎年100万人以上の若者が労働市場から姿を消す。一時600万人に達した失業者が次第に減少していく様子を、ゲッベルスの啓蒙宣伝省はラジオや新聞で詳しく伝えた。

「勤労奉仕の現場がいかに過酷で、生産性が上がらなくても、それは問題にならなかった。失業者の数を減らすこと――それが先決だった」。無駄な公共事業で雇用を「創出」する今の政府との違いは、程度の差でしかない。

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