2016年7月30日土曜日

マクニール『マクニール世界史講義』



政府という搾取者

人間社会は搾取する者とされる者で成り立つなどと言えば、カビの生えたマルクス史観かとうんざりするかもしれない。そうではない。世界的に著名な歴史学の長老の説だ。ただし、搾取する者は資本家ではない。政府である。

著者マクニールは、微生物が人間に寄生する「ミクロ寄生」をヒントに、人間の集団や階級間の搾取関係を「マクロ寄生」と呼ぶ。小作農に労働を強制する地主、農村に押し入る武装した侵略者は、典型的なマクロ寄生者である。

著者がもう1つ挙げる寄生者の例は、税や地代の集金人である。現代流にいえば、著者はその言葉を使っていないが、政府である。その収奪のやり方は侵略者のように露骨ではなく、「支払う者が死なない程度の額」を搾り取る。

マルクスは資本家が労働者を搾取すると主張したが、その根拠は経済学的に破綻した「労働価値説」で、真の搾取者を見抜けなかった。マクニールははるかに簡明に、搾取者は政府だという政治的に不都合な事実を淡々と述べる。

マクニール自身は意図していないだろうし、彼のブームに喜ぶ出版関係者も気づいていないだろうが、政府は搾取者という事実は、納税拒否という非暴力革命に正当な根拠を与える。お行儀のよい教養書として読まれるには惜しい。

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