2016年7月4日月曜日

内田樹・姜尚中『世界「最終」戦争論』



戦争と商取引の混同

グローバル化や新自由主義という言葉を定義せず振り回す本は信用できない。内田樹は、欧州への難民は「グローバル化の帰結」と言う。だが難民が発生した主因は、欧米の軍事介入で悪化した中東の内戦で、自由貿易や移動の自由ではない。

内田はさらに、難民の移動を止めるには関税を引き上げ、入国管理を厳しくするなど国民国家の障壁を再構築してグローバル経済を止めるしかないと言う。そんなことをすれば国家間の対立を深めるばかりで、逆効果である。

内田は、自由貿易は米国の国是であり、これだけは譲れない信念だと断言する。明らかな誤りである。もし自由貿易が米国の国是なら、外国製の鉄鋼や自動車に関税をかけたり、自国農業を補助金で助けたりするはずがない。

内田と姜尚中は、日本企業が兵器産業に傾斜することを憂慮する。それは正しい。しかし兵器産業が資本主義の「象徴」(姜)とはおかしい。兵器産業を潤すのは肥大化した政府の税金であり、消費者の自由な購買行動ではない。

姜はせっかく「戦争寄生的な資本主義」と「労働倫理に裏付けられた自生的な資本主義」の区別を指摘しておきながら、内田に調子を合わせて議論をそれ以上深めない。戦争と商取引、暴力と非暴力を混同した議論は、戦争を止める役に立たない。

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