2016-08-28

投機を強いる不換紙幣

*Daniel Fernández Méndez, 45 Years Without Gold(「金のない45年間」)より抜粋。


金本位制なら、貯蓄する際に三つの選択肢がある。第一に、経済も通貨も安定していると考える場合、(株式を通して)事業(project)に投資し収益を得られる。収益を期待して資産を固定するわけだ。ただし悪い投資先だと資産を失うリスクはある。


第二に、経済は不安定だが通貨は安定していると考える場合、資産を銀行口座(bank account)に置いておくことができる。資産が固定されず、リスクにさらさずに済む。


第三に、経済も通貨も不安定だと考える場合、資産を金(きん)として保有し、流動性を確保できる。これは経済・金融の混乱(turmoil)から資産の価値を守る助けになる。


不換紙幣になった1971年以降、第三の選択肢が消えた。経済が不況に入り、金融当局(monetary authorities)が債務の過剰なマネタイズなど無責任な行動を取ると考えても、選べる道は二つしかない。投資して資産を失うか、減価する現預金を保有するかだ。

通貨を金に交換できない現在、インフレから身を守りたければ、損を覚悟で流動性のない実物資産(資本財や不動産)を購入するか、拙劣な金融政策のせいで価値を失う通貨を保有するしかない。…事実上、誰もが投機家(speculator)になるのだ。

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