2016年9月10日土曜日

高橋洋一『日本はこの先どうなるのか』


雇用増は良いことか

著者はデータに基づく分析を重視し、「データに基づかなければ、議論する意味はまったくない」とまで言い切る。かりにそうだとしても、問題はデータをどう解釈するかである。ある数値が増大しても、それが良いことだとは限らない。

「金融政策の究極の目的は、雇用を増やすことにある」と著者は言う。たしかに金融緩和で景気が良くなれば、雇用は増えるだろう。しかし人為的なカネ余りによる雇用増は不動産や建設など一部の産業に偏る。経済構造はいびつになる。

著者は、日銀のマイナス金利は投資や消費を活発にすると評価する。これも雇用と同じく、増えればよいわけではない。カネ余りによる消費や投資の増大は、カネが永遠に増え続けないかぎり、終りを迎える。結局資源の浪費でしかない。

現在のマクロ経済学の欠陥は、経済の量ばかりに注目し、質に無関心な点だ。極端な話、穴を掘って埋めるだけでも、雇用や投資が増えれば経済にプラスと考える。しかし雇用や投資は社会を豊かにする手段にすぎず、目的ではない。

人が消費するのは幸福になるためである。金融緩和で本来買いたくもない物を買わせても、幸福にはならない。繁栄も長続きしない。著者は「世界標準」の経済学を振りかざすが、残念ながらそれは人間の内面を無視した誤った学問なのだ。

財務省の「増税至上主義」に対する批判には同感だ。しかし著者は一方で、インフレ政策という「見えない増税」を一貫して主張している。これは矛盾であり、せっかくの増税批判の説得力をみずから弱めてしまう。

0 件のコメント:

コメントを投稿