2016年9月12日月曜日

広井良典『ポスト資本主義』


社会主義の亡霊

ベルリンの壁崩壊後も、知識人の多くは社会主義への幻想を捨てきれない。ソフトな装いに工夫を凝らし、その復活をもくろむ。しかし一皮むけば、権力で人間を意のままに動かそうとする本音が現れる。たとえば本書のようにである。

著者は歴史家ブローデルの議論を踏まえ、市場経済と資本主義を区別せよと述べる。市場経済は比較的透明で公正だが、資本主義は対照的に不透明性、投機、巨大な利潤、独占、権力などが支配的になり、弱肉強食の世界だという。

しかし、ここで著者が列挙する「不透明性、投機、巨大な利潤、独占、権力」とはいずれも、国家が企業と癒着した縁故資本主義の特徴である。たとえば投機は、中央銀行が民間銀行を通じて供給する過剰なマネーで増幅される。

著者がいう「資本主義」とは縁故資本主義のことだから、それを打破するには国家と企業の関係を断ち、自由な市場経済の発展を促せばよい。ところが著者が示す解決策は、それとは正反対の「社会化」、つまり社会主義化である。

たとえば、「機会の平等」を実現するため、相続に関して再配分を強化せよと言い、それは「ある意味で社会主義的」と認める。資本主義は権力が支配するからよくないと批判する一方で、社会主義の権力を支持する矛盾に気づいていない。

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