2016年9月20日火曜日

池井戸潤『ロスジェネの逆襲』

ロスジェネの逆襲
ロスジェネの逆襲

官僚主義との対決

企業と官庁はどちらも人々にサービスを提供する。表面上は似かよって見えるかもしれない。しかし、明らかに違う点がある。企業は顧客を満足させるために活動するが、官庁は国民の満足でなく自身の権限拡大のために仕事をする。

銀行は企業の中では、官庁的な性格がとくに濃い。がんじがらめに規制が課され、何かにつけて役所の顔色をうかがわなければならないからだ。それと引き換えに、競争の制限や経営危機時の税金による救済など、特別な保護を享受する。

証券子会社に出向中の主人公・半沢直樹は、銀行のお役所体質が企業としておかしいと理解している。今の銀行組織はなぜダメなのかと若手から尋ねられ、こう答える。「自分のために仕事をしているからだ〔……〕仕事は客のためにするもんだ」

顧客の満足より自分たちの組織防衛を優先する銀行の官僚的な態度に、顧客も厳しい目を向ける。ベンチャー企業の女性副社長は、銀行員に対し辛辣に言う。「世の中の客商売で、自分たちの都合を言い訳にしているのは銀行だけですよ」

企業買収を巡って親銀行と証券子会社が対決するのはやや現実離れしているし、半沢の言葉はときに読者受けを狙いすぎる。それでも面白さで読ませるし、部下の森山の若者らしさも好ましい。官僚主義に立ち向かう彼らに素直に拍手したい。

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