2016-10-13

所有権、ノーベル賞で脚光

*Peter G. Klein, The 2016 Nobel Prize: Incentives, Property Rights, and Ownership(2016年ノーベル賞――インセンティブ・財産権・所有権)より抜粋。

所有権(Ownership)は、生産資源の支配で最後に物を言う。…資源の所有者は助言者を雇うことはできるが、最終決定を下すのは所有者自身である。

今回ノーベル経済学賞を受賞したハートの研究(Hart’s work)は、資産の所有権に関するある考え方に基づく。所有権とは、事前の合意で想定しない場合、資産の使い方を決める権利と定義される。

未来に起こりうるあらゆる出来事を予想し、どうするか前もって合意することは不可能である。つまり、実行可能な契約はすべて「不完全」(incomplete)である。見落としや考えの食い違いは避けられない。

だから所有権は食い違いを埋めるために必要である。もし甲(party A)が資産の所有者ならば、乙(party B)に契約上一定の権利があったとしても、不測の事態が起こった場合、判断を下すのは甲である。

ハートとホルムストロームはウィリアムソン(2009年受賞)と異なり、ハイエクのような思想家(thinkers)の影響は小さいし、今風の数理経済学の流儀で論文を書くけれども、その業績は細心の研究に値する。最近の受賞者にはなかったことだ。

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