2016年10月20日木曜日

佐伯啓思『自由と民主主義をもうやめる』

自由と民主主義をもうやめる
自由と民主主義をもうやめる

詭弁による自由主義批判

詭弁の一種に、相手が主張していないことを自分の都合のよいように表現し直し、論破することで、あたかも相手の主張を論破したかのように見せかける手法がある。「藁(わら)人形論法」という。本書で著者は、その詭弁を用いている。

戦後、日本的価値に代わってアメリカ型の自由民主主義が持ち込まれたとして、著者はこう批判する。「自由が無条件に大事だと言ってしまうと、とんでもない『悪』をなす自由も認めることになります」。これが藁人形論法である。

自由至上主義者といわれるリバタリアンでさえ、「とんでもない『悪』をなす自由」を認めたりしない。前提として、「正当な理由なく他人の生命・身体・財産を侵害してはならない」という明確なルールがある。非侵害公理と呼ばれる。

その意味で、自由を「無条件に」許すべきだと主張する自由主義者など存在しない。つまり著者は、相手が主張していないことを自分に都合よく表現し直し、あたかも非常識な主張であるかのように見せかけている。正しい議論ではない。

「アメリカ型」の自由を罵る著者が復権を叫ぶのは、「日本的精神」である。それは何かといえば、「海ゆかば」に歌われた、「天皇のために生き、天皇のために死んでい」く精神だという。もし著者がそうしたければ、それは自由である。

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