2016年11月25日金曜日

高橋洋一『これが世界と日本経済の真実だ』

これが世界と日本経済の真実だ
これが世界と日本経済の真実だ

偽りの増税反対

昔、猿回しが猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと喜んだという。目先の違いに気をとられ、実際は同じであるのに気づかない「朝三暮四」の由来だ。

著者は消費増税に反対する。それには賛成だ。だが残念ながら、著者の増税反対は本物ではなく、朝三暮四でしかない。それはこの記述に明らかだ。「消費増税するとしても、増税をする前に経済を立て直してから増税を行うとすればいい」

不況で国民の生活が苦しいときに増税をやめるのは正しい。しかし不況が終わったら結局増税されるのでは、楽になるはずの生活は楽にならない。より正しい政策は、不況時に消費税率を引き下げ、不況が終わっても元に戻さないことだ。

一方で著者は、アベノミクスの金融緩和を高く評価する。だが金融緩和とは国民の持つ現預金の価値をわざと引き下げることで、形を変えた増税である。著者自身、別の場所で「インフレ税」と呼んでいる。財務省の露骨な増税より悪質だ。

さらに著者は、国税庁と年金機構を一体化した「歳入庁」の創設を提案し、メリットとして「税と保険料の歳入増」をあげる。自営業や農家の徴収漏れを苦々しく思うサラリーマンの心情には訴える議論だが、それなら正しい道は自営業などの徴収強化ではなく、サラリーマン減税だろう。

財務省の増税路線に対する著者の批判は正しい。しかし増税そのものに本気で反対するつもりはないのではないか。そんな疑念が強まるばかりだ。

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