2016年2月29日月曜日

〔本〕網野善彦『日本の歴史をよみなおす』


「日本人に市場経済はなじまない」のウソ


「日本人はもともと農耕民族だから、米国流の市場経済はなじまない」という意見をよく耳にする。しかし、それは歴史的事実に反する。本書によれば、中世の僧は職人を動員して寺社の修繕を請け負う企業家であり、唐船に乗り込んで中国との貿易に携わる商人でもあった。貴族や寺院・神社の支配する荘園は、田畠だけに依存する自給自足経済ではなく、海や河を利用した交易なしに成り立たなかった。マルクス主義から出発した著者によって、企業家精神にあふれたダイナミックな日本社会の姿がよみがえる。

<抜粋とコメント>


"律僧は勧進によって集められたものを資本として運用する企業家であり、また貿易商人としての役割もはたしていた"
# 寺で学問漬けのイメージとはかけ離れた、鎌倉時代のお坊さんによるグローバル資本主義。

"自らの立場を保つためにそれなりに必死だった当時の支配者、貴族や寺院や神社は、決して田畠のことだけ考えて所領を集めていたわけではありませんでした。もちろん、荘園の田畠に賦課されている年貢や公事、いろいろな特産物も、十分考慮に入れていますが、それだけではなく、津、泊、浦など、河海の交通、山野なども計算にいれ、総合的に考えて荘園を設定しているのです。"
# 中世日本の水運ネットワーク。

"荘園制は本来、自給自足経済であったという、一時期まで通説だった見方にまったく根拠がないことは明らかです。"
# 里山資本主義で自給自足? 鎌倉時代の人はたぶん嫌がるでしょう。

"「明治維新」を推進した薩摩、長州、土佐、肥前の諸藩は、辺境のおくれた大名などではなくて、みな海を通じて貿易をやっていた藩"
# 自給自足では経済力も国際情勢の知識も養えない。

"日本社会の古くからのことばが現在でも商業用語として用いられている…この分野では翻訳語を用いる必要がなく、自前のことばを使って十分通用した"
# 相場、手形、株式。資本主義は日本の伝統。

アマゾンレビューにも投稿。

2016年2月28日日曜日

〔翻訳〕国旗制定記念日を廃止せよ

評論家・ミーゼス研究所会長、ルウェリン・ロックウェル(Llewellyn H. Rockwell, Jr.)による記事(公開日不明)「国旗制定記念日を廃止せよ」(Abolish Flag Day)より。

<解説>

6月14日は、米国で国旗の制定を祝う記念日とされている。ロックウェルは、この日が歴史上、不必要な戦争を国民に支持させるためのナショナリズム煽動に使われてきた事実を指摘し、廃止するよう提案する。日本の国旗・国歌問題にも示唆を与える。

<抜粋>

保守主義の教義に反して、伝統がすべて守るに値するわけではない。
But contrary to conservative doctrine, not all traditions are worth keeping.

革新派のウッドロー・ウィルソン大統領〔民主党〕が米国の国旗制定記念日〔6月14日〕を初めて承認したのは、第一次世界大戦中〔1916年〕だった。明らかに、その目的は戦争の宣伝活動だった。
According to the Claremont Institute, it was in the midst of the wartime Progressive Era (the worst years in American history until the New Deal) that the dictator Woodrow Wilson gave the nod to the first Flag Day. Clearly the purpose was war propaganda:

〔1949年に〕国旗制定記念日を公式に宣言したのは〔同じく民主党の〕ハリー・トルーマン大統領だった。トルーマンは記念日を利用してナショナリズムを強め、ソ連に対する冷戦を支持させようとした。
An official declaration of National Flag Day occurred at the hands of Harry Truman, who used it as a way to solidify nationalist sentiment in favor of his Cold War against Russia.

国旗制定記念日は、暴政からの独立と自由という米国の伝統からほど遠い。狙いは、全国民を中央政府に忠実にすることである。
Far from being a day steeped in the American tradition of liberty and independence from tyranny, this day has been set aside so that we will all be loyal to the central government as it builds ever larger and more destructive bombs to control people at home and abroad.

独立記念日(7月4日)は、米国が果たした英国からの栄えある分離を祝う。独立記念日は、愛国心の本当の意味を教えてくれる。愛国心とは政府に忠誠を誓うことではなく、政府に反逆することである。
Well, that still leaves us with the Fourth of July, my kind of holiday because it is celebrates the glorious American secession from Britain. This holiday teaches us the true meaning of patriotism: not loyalty to government but revolt against it.

原文:https://www.lewrockwell.com/1970/01/lew-rockwell/abolish-flag-day/

2016年2月27日土曜日

自国の戦争は良い戦争

# 日本列島を軍事拠点化するのはいいんでしょうか。
--中国、南シナ海を軍事拠点化…米司令官が批判
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160224-OYT1T50022.html

# 政府が国民に向かって、〔戦争や軍事を良し悪しで論じるのは愚かなことだと〕そのようにあけすけに正直に語ってくれればいいのですが。現実にはいつも、自国の戦争は良いという考えを押しつけます。
https://twitter.com/shin8it0/status/702981819990315009

# 主権を守るための戦争でないときまで、これは主権を守るための良い戦争だと言われても困ります。
https://twitter.com/shin8it0/status/702996950132531200

# もし日中安保条約が結ばれたら、親米派は反日呼ばわりされるんでしょうね。政治なんてそんなものです。
https://twitter.com/akugenta03/status/703164580160090112

ツイッターより転載。誤字等は修正。

質の良くない起業

# けしからん、もっと厳しく監督しろ? 賛成です。市場競争で容赦なく監督しましょう。
--メルトダウンの判定基準、明記していた。東電が謝罪「5年間気づかなかった」
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/24/melt-down-manual_n_9311808.html

# やる気のある起業家がお金を借り事業を起こしやすくなるから、という主張。人為的な低金利でやっと可能になる起業は、質の良くない起業。資源と人材の無駄遣いです。
--マイナス金利は心配無用 国民も政府もメリットのほうが大きい
http://diamond.jp/articles/-/86888

# 骨折するような暴力はいじめではありません。犯罪です。違法と合法の境をあいまいにすれば、問題解決から遠ざかるだけです。
--いじめで生徒が骨折、男性教諭「転んだことに」
http://www.asahi.com/articles/ASJ2R6F24J2RPIHB02X.html

# 通貨切り下げ競争は国際対立を招きます。第二次大戦の教訓が生かされなければ、行き先はひとつ。
--クリントン氏、「日中が為替操作」と批判
http://toyokeizai.net/articles/-/106495

2016年2月26日金曜日

官営福祉の悲劇

# 一部の不始末を理由に介護ビジネスを全否定し、国の財政が破綻寸前であることを知りながら、官営福祉を続けろと叫んだ人たち。まだ同じ主張を続けますか。
--「介護に疲れ妻殺害容疑で逮捕の夫、食事拒み続け死亡」
http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye2710283.html

# 音楽を聴いていたことと、高速で走行し不注意だったこととの関係がわかりません。自動車で音楽を聴くのもダメですか。
--自転車で女性はね死なせた大学生に有罪判決 千葉地裁
http://cyclist.sanspo.com/235037

# 大企業からみれば労働者はいくらでも代わりのきく部品にすぎない? 自由競争のある経済では、どんな大企業もそんなに傲慢ではいられません。
--ディズニー値上げ・満足度低下の裏にバイト時給の低迷
http://diamond.jp/articles/-/86687

# 税は理屈よりも多く取ることを優先するからしょせん矛盾だらけですが、せめて女性の社会進出という政府目標に反しない扱いをしてもらいたいもの。
--経費って何? ベビーシッターは対象外
http://www.nikkei.com/article/DGKKASM429H02_Q6A210C1MM8000/

# リビアを救うための軍事侵攻がリビアを破壊。今や強盗、泥棒、国際マフィアの巣窟と化す。
--西側カダフィ大佐のいとこ:NATO諸国は破壊のためにリビアに来た
http://jp.sputniknews.com/middle_east/20160222/1657144.html

国歌と校歌

# 国にとって国歌が大切だというのなら、大学にとって校歌が大切だという思いを無視するのはおかしなことです。
--岐阜大「君が代は斉唱しない」 馳文科相「交付金が投入されているのに恥ずかしい」
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/21/national-anthem_n_9287396.html

# ご指摘のとおり、馳さんは「校歌を歌うな」とは言っていません。しかし式で歌う一曲を校歌にしたいと相手が言っているのに、国家を歌えというのは、やはり校歌を愛する相手の気持ちを理解していません。
https://twitter.com/itoishi/status/701901149096452096

# 馳大臣の意図が「両方歌え」であれば、国歌だけの強制よりもちろんましです。ただしそれでも、国歌を歌うかどうかは、大学・学生側の良心の自由に属する事柄だと思います。たとえ国立大学でも。
https://twitter.com/itoishi/status/701917093617225728

# 良心の自由とは、政府の強制からの自由のひとつですから、もし岐阜大学という国立大学が学生や教職員の意に反して校歌を強制すれば、問題になりえます。そんなことがあるかどうかは別として。
https://twitter.com/itoishi/status/702686847181332480

ツイッターより転載。誤字等は修正。

2016年2月25日木曜日

無免許教員は悪か

# なんたる理不尽。無免許でも授業に問題がなかったのなら、むしろ問われるべきは教員免許制度の無意味さです。
--32年無免許教諭、給与1億数千万の返還請求も
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160223-OYT1T50072.html

# 無免許でも病気を治してくれたら、その医者は詐欺ではないでしょう。
https://twitter.com/ahrzyiggj9mbeyd/status/702486367662551040

# いびつな行政肥大の陰の犠牲者。3月31日で雇止めされた非常勤の相談員が、4月1日にカウンターの反対側に座り、自分の仕事探しの相談をするなんてこともあるとか。
--増加する「非正規公務員」とはなにか?
http://synodos.jp/politics/16217

# 「安全を得るために自由を棄てる者はどちらも失う」(フランクリン)。そもそもテロの確信犯に有効なのかも疑問です。
--東海道・山陽新幹線で客室常時録画開始 セキュリティー強化や犯罪抑止で http://www.sankei.com/smp/affairs/news/160223/afr1602230005-s.html

# マイナス金利を導入したデンマークやスウェーデンではすでに不動産価格が大きく上昇。資産格差が開いても、市場原理主義のせいだとは決して言わないでください。
--不動産融資、26年ぶり最高 昨年10.6兆円、緩和マネー動く
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGC20H0B_Q6A220C1MM8000/

# 液晶から有機ELパネルへの転換に出遅れ。買収の狙いはアップル向けサプライチェーンに食い込むこと。技術流出の懸念は的外れと指摘。
--シャープ「巨額買収」狙う鴻海の裏事情
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO97470820Z10C16A2000000/

2016年2月24日水曜日

離脱する自由

# 領土の広い狭いと国の繁栄は関係ありません。ましてやちっぽけな岩。領有を巡って意地の張り合いを続ければ、むしろ国を危うくします。
--菅官房長官「領土主権は国の基本」 「竹島の日」記念式典
http://www.sankei.com/smp/politics/news/160222/plt1602220014-s.html

# 高齢者のほうが多いとか、総理を呼び捨てはけしからんとか、どうでもいい批判が目立ちます。それこそ平和ボケ。
--安保関連法に抗議、高校生らが一斉デモ 大音量の音楽に合わせて「憲法守れ」
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/21/security-law-demo_n_9287178.html

# 人々が望むなら、止める理由はありません。スコットランドの英国離脱も。沖縄も。
--ロンドン市長「6月の国民投票でEU離脱を支持する」
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/6-7.php

# 労働価値説でこれをどう説明するか、マルクスに聞いてみたかった。
--レノンさん:毛髪に394万円 英国拠点の収集家が落札 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160222/k00/00e/040/134000c

2016年2月23日火曜日

交通事故は車メーカーの責任?

# こういうことを言う小林よしのりさんも、中国製の電子部品や雑貨は使っているでしょう。嫌いな相手とも協力できてしまう市場経済のすばらしさに乾杯。
--外国人観光客は目障りだ
http://yoshinori-kobayashi.com/9602

# 上位はすべて運転者の不注意。車の欠陥ではありません。交通事故の責任を車メーカーに押しつけるのは的外れ。ちょっとした不注意で惨事に至る欠陥道路を作る政府が問題です。
--日本のどこかで毎日起きている交通事故 原因ランキング発表
http://www.sankeibiz.jp/business/news/160220/bsa1602201700002-n1.htm

# 安倍さんの憲法理解はともかく、表現の自由が経済の自由に優先するという通説は誤りです。経済の自由がなければ、表現の自由は実現の場を確保できず、絵に描いた餅になってしまいます。
--安倍政権が放送局への介入を躊躇しない理由が判明した
http://lite.blogos.com/article/161970/

# 違法でもグレーでもなくても、右翼から「愛国心がない」、左翼から「公共心がない」と難癖をつけられるから気をつけて。
--映画製作優遇措置で「節税」 RBS、英控除制度利用し10億ポンド
http://www.sankeibiz.jp/business/news/160220/bsk1602200500003-n1.htm

# 金本位制の19世紀、各国の政治家が「政策協調」のため集まることはありませんでしたが、世界経済は繁栄しました。政治の力で経済を操作するから危機を招くのです。
--G20は政策の影響協議必要、協調求める=IMF専務理事
http://jp.reuters.com/article/g20-china-imf-idJPKCN0VS2X1

# 19世紀も金融危機はありました。米国初の恐慌といわれる1819年恐慌の場合、戦争で政府が財政を大幅に拡大したことが原因とされます。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/The_Panic_of_1819_(book)

2016年2月22日月曜日

貧しさから抜け出す道

# 「自社の評判への悪影響」を懸念したと批判。そのとおり。だから私企業は信頼できるのです。
--米司法省:アップルのロック解除要請
http://mainichi.jp/articles/20160221/k00/00m/030/026000c

# 貧しさから抜け出す道は倹約と投資。情け深い政府がタダで恵んでくださるお金にご用心。
--有吉弘行に学ぶ「貧乏人がすべきたった1つのこと」
http://news.line.me/issue/business/2843b79677c6

# 格差は問題ではありません。問題は貧しさから抜け出す努力を妨げるさまざまな規制です。
--ホームレスから「全米1位のスタバの店長」へ アメリカン・ドリームを果たした男性の話
https://news.careerconnection.jp/?p=20933

# 民間に不合理な行動を強いる金融政策こそ、不合理だと言うべきでしょう。
--貸出・預金のマイナス金利、合理的でない=金融法委員会
http://jp.reuters.com/article/japan-bank-rates-idJPKCN0VT070

# 子育てに配慮しない企業が悪いとの主張。でも余裕のある大企業はそれなりに配慮しています。中小企業に配慮を押しつければ結局、行政なんとかしろという話に。
--怒りの矛先は保育園を増やさない行政なのか? - 赤木智弘
http://blogos.com/article/161930/

ツイッターより転載。誤字等は修正。

2016年2月21日日曜日

〔翻訳〕自由貿易は戦争を防げるか

エコノミスト、リチャード・エベリング(Richard M. Ebeling)による2002年の文章「自由貿易は本当に戦争を防げるか」(Can Free Trade Really Prevent War?)より。

<解説>

自由貿易は商業や文化の領域で国際的な相互依存を促し、軍事的な対立に歯止めをかける。しかし結局のところ、暴力による強制よりも平和で自発的な協力を尊ぶ精神が人々の間になければ、戦争は防げない。政府による経済規制は、戦争ほど露骨ではないものの、その本質は暴力による強制である。規制を当然と考える精神で、戦争を防ぐことはできない。

<抜粋>

19 世紀は戦争や国際紛争のない世紀ではなかった。しかしそれ以前、またとりわけ20世紀に比べれば、1815年のナポレオン戦争終結から1914年の第一次世界大戦勃発までの百年間は平和で、「戦争のルール」を作る国家間の試みが盛んだった。
The nineteenth century was not without war and international conflict. But in comparison to earlier centuries, and certainly in comparison to the twentieth century, the hundred years between the defeat of Napoleon in 1815 and the opening shots of the First World War in 1914 was a period of relative peace and international attempts to devise "rules of warfare."

国際貿易によって商業、文化、通信における相互依存のネットワークを築き、戦争をなくすか、せめてもっと「文明的」にしようという希望は、1914年の第一次世界大戦勃発で打ち砕かれた。
All of the treaties and agreements and all of the hopes that international trade would establish a web of mutual interdependency in the areas of commerce, culture, and communication, which would make war impossible or at least more "civilized," died on the battlefields of Europe in 1914.

20世紀の戦争や大量虐殺を自由貿易のせいにすることはできない。20世紀は19世紀に築かれた古典的自由主義の理念と理想に対する反逆の百年だった。…第二次大戦後の世界経済体制がめざしたのは管理貿易で、自由貿易ではなかった。
None of the wars, conflicts, and mass murders of the twentieth century can be blamed on free trade or explained in terms of free trade. The entire last one hundred years was a revolt against the ideas and ideals of the Classical Liberals of the nineteenth century.

20世紀に国家の経済介入や計画経済の考えが広がったのは、政府が国際貿易を監視・管理しないと、国内政策の目的を妨げるからである。
The interventionist and planning ideas during the last one hundred years meant that trade among nations could not be left outside of government oversight and control, lest the directions and patterns of international trade undermine and frustrate the goals and purposes of national governments in their domestic affairs.

自由貿易は20世紀に戦争を防げなかった。第一次大戦の勃発までには人々がもはや自由の理念をほとんど信じなくなっていたからである。経済の自由の精神は1860-70年代に絶頂に達し、そこから自由に対する反革命が始まった。
Free trade was unable to prevent war in the twentieth century because by 1914, very few people believed any longer in the idea of liberty.6 The spirit of economic freedom reached its zenith in the 1860s and 1870s. From then on a counterrevolution began against freedom.

自由貿易は、人々がもはや平和を信じないときには、戦争を防ぐことはできない。自由貿易の前提は、人間の関係は強制によらず互いの合意に基づかなければならないとする考えである。
Free trade cannot prevent war when men no longer believe in peace. Free trade is premised on the idea that human relationships should be voluntary and based on mutual consent.

アダム・スミスの言う「公衆の偏見」(経済学に対する一般市民の無知)と「私的利害関係者」(国家権力を利用して他人の財産を奪う人々)に打ち勝たない限り、自由貿易で将来の戦争を防ぐことはできない。
We must continue to fight and hopefully prevail through reason and argument against what Adam Smith referred to in 1776 as the "prejudices of the public" (the economic ignorance of our fellow men) and the opposition of the "private interests" (those who wish to use the power of the state to plunder others in society).14 Until we do, free trade will not replace and then help to prevent future wars.

原文:https://mises.org/library/can-free-trade-really-prevent-war

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河邑厚徳他『エンデの遺言』


マイナス金利のファンタジー


日銀が国内初となるマイナス金利を導入した。マイナス金利は目新しい試みのように受け止められているが、この倒錯した政策のアイデアは昔からあり、戦前の大恐慌時に一部地域で短期間実施されたこともある。十六年前に出版された本書は今日を予言したかのように、経済・社会問題を解決する妙案としてマイナス金利をほめそやす。しかしその主張は、経済に対する無知に基づく。

本書はドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデへの取材をもとに、現代の金融システムに警鐘を鳴らす。その問題意識は正しい。「問題の根源はお金にある」(第一章)というエンデの考えも間違っていない。ところがその後の議論は混乱を極める。エンデや著者たちが正しい経済学を知らないからである。

たとえば著者たちは、お金は劣化しないから持ち続けても費用がかからないという(第三章)。だがお金に限らず、ある物を持ち続けることに伴う経済的な費用は、物質的な劣化とは関係ない。たとえお金が劣化しないとしても、逃れられない費用がある。それは機会費用である。

ある金持ちの金庫にある現金が一年後も同じ額であれば、一見損はしていない(費用はかからない)ようにみえる。だがそのお金で人を雇って商売すれば利益をあげられたとすると、その利益をみすみす失ったことになる。これを機会費用という。

著者たちは、お金は持ち続けても費用がかからないから、金持ちは取引の条件が自分に有利になるまでいつまでも待つことができるという。しかし実際にはいま述べたように、お金を抱え込むことで儲けのチャンスを失う恐れがある。だから労働力しか売るもののない労働者よりも資本家(金持ち)はつねに有利だという考えは、間違っている。

さらに著者たちは、お金の価値は、インフレやデフレの影響を考えなければ、つねに変わらないという(同)。しかしインフレ、デフレが示すものは、さまざまな物の値段の集計値にすぎない。集計された物価全体が安定していても、個々の商品に対するお金の価値は日々変動する。

焼き芋の人気でサツマイモ一本の値段が一年前の140円から今年170円に値上がりすれば、それはサツマイモに対するお金の価値が下がったことを意味する。逆にある物の値下がりは、その物に対するお金の価値が上がったことを意味する。物価全体が安定していても、ほしい物の値段が上がったり下がったりすれば、その人にとってのお金の価値は変わる。

ついでにいうと、サツマイモが値上がりすれば、農家は儲けるためにサツマイモの生産を増やすから、より多くの人が焼き芋を食べられるようになる。逆に焼き芋の人気がなくなり、サツマイモが値下がりすれば、農家は生産を減らすだろう。このように物の値段は、物の需要と供給を釣り合わせる働きをする。政府や中央銀行が物の値段を無理に安定させようとすると、この調整機能が妨げられ、経済の効率を悪くする。

さて本書では、お金の価値が劣化しないことにすべての問題があるという誤った考えに基づき、シルビオ・ゲゼルという経済学者が考案した「スタンプ貨幣」のアイデアを推奨する(同)。たとえば1万円札なら、毎月100円のスタンプを買って押さないと1万円として通用しないようにする。ふつうは銀行に預ければ一定の利子がつくのと反対に、このお金は放っておけば金額が減っていく。今でいうマイナス金利と実質同じといえる。

大恐慌期の1932年、ゲゼル理論を信奉していたオーストリアのヴェルグルという町の町長は、このアイデアを実践する。町独自の労働証明書という地域通貨を発行したのである。この通貨は、月末に減価分に相当するスタンプを町当局から購入して紙券の裏に貼らないと、額面価額を維持できない。

地域通貨は「非常な勢い」で町を巡り始める。お金を早く使ってしまえば、スタンプ代を払わなくて済むからである。通貨を受け取った商店主は滞納していた税金の支払いに使い、町は公共事業のためにこれを支出する。「町の税収は労働証明書発行前の八倍にも増え、失業はみるみる解消していきました。商店は繁盛し、ヴェルグルだけが、大不況のなか繁栄する事態となりました」。橋やスキージャンプ台が建てられ、市庁舎は美しく修復され、念入りに飾り立てられた。著者たちは「ヴェルグルの奇跡」と絶賛する。

マイナス金利は本当に奇跡を起こしたのだろうか。上記の描写から見て取れるのは、明らかなバブル景気である。半ば強制的にお金を使わせれば、たしかに景気は一時よくなる。しかしそれは長続きしない。経済が発展を続けるには、人々が貯蓄をし、それをもとに企業家が投資をし、産業の生産性を高めなければならない。過剰な消費や公共事業はそれを妨げる。

オーストリアの中央銀行が紙幣発行の独占権を侵したとして訴訟を起こし、勝利したため、ヴェルグルのスタンプ貨幣の試みはわずか一年で幕を閉じる。もし中止されなければ、やがてバブルの崩壊に見舞われただろう。マイナス金利がもたらす繁栄は、つかの間のファンタジーにすぎない。

現代の経済・社会問題の根源は、政府・中央銀行がお金の発行権を独占し、政治目的のためにお金の量を無制限に増やすことにある。だから独占を打破する地域通貨の試みは間違っていない。しかしせっかくの地域通貨も、バブルをもたらすマイナス金利という仕組みが組み込まれてしまってはむしろ害悪である。

本書を読み、マイナス金利はすばらしい工夫だと思い込む人は少なくないだろう。そして日銀や世界の中央銀行によるマイナス金利政策を支持するかもしれない。現代の金融システムに警鐘を鳴らそうとしたエンデや著者たちにとって、なんとも皮肉なことである。

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2016年2月20日土曜日

〔翻訳〕マイナス金利が失敗する理由

エコノミスト、フランク・ホレンベック(Frank Hollenbeck)による2016年の記事「マイナス金利が失敗する理由」(Why Negative Interest Rates Will Fail)より。

<解説>

マイナス金利とは要するに、貯蓄を罰し、半強制的にカネを浪費させようとする政策である。浪費は短期で景気をよくすることはできても、貯蓄・投資の不足を招き、長期の繁栄をむしろ阻害する。ともあれ、勤勉・倹約の精神に反するこのような政策を推し進める政権に、「美しい日本」の伝統を本気で守る気がないのは明らかである。

<抜粋>

ことわざにあるとおり、馬を水際に連れていくことはできても、飲ませることはできない。銀行は世界不況で信用できる貸付先がなく、以前の融資を回収するにも苦労している。
Yet, there is an old adage: you can bring a horse to water but you cannot make him drink! With the world economy sinking into recession, few banks have credit-worthy customers and many banks are having difficulties collecting on existing loans.

経済理論からは、マイナス金利は不可能である。1年後に1,000ドルをもらうために1,005ドルの国債を買う人がいるだろうか。タンス預金なら1,005ドルは1年後も1,005ドルのままなのに。
But, economic theory presupposes that negative rates are an impossibility. After all, why would you buy a one-year treasury bill for $1,005 that will get you $1,000 in a year, when you can stuff your mattress with the $1,005 and still have $1,005 in a year?

もし1,005ドルの国債を買って、満期になる前に中央銀行に1,005ドル以上で売却するつもりなら、理解できる。今の世界では、中央銀行は損を覚悟で無制限に国債を買うものと期待されている。つまりただの国債引受である。
It makes sense to purchase a bill for $1,005 if you intend to sell it before it matures to the central bank for more than $1,005. In today’s world, the central bank is often ultimately expected to purchase the bill and lose money on it. It’s just another type of debt monetization.

お金は普通の商品ではないから、量を増やしても解決にはならない。お金の役割は、現在と未来の供給と需要を調整することにある。…マイナス金利は需給のアンバランスを大きくするだけである。
That is, money isn’t just some commodity that can solve our problems if we just create more of it. Money serves a key function of coordinating output with demand across time...Negative rates will only ensure an ever greater misalignment between output and demand.

日本と同様、低金利・マイナス金利政策をとる国々は、それをやめない限り、何十年も低成長のままだろう。不況の原因は需要不足ではない。供給と需要のアンバランスである。
As with Japan, Western economies that pursue a long-term policy of low or negative interest rates can expect decades of low growth unless these “unorthodox” monetary policies are rapidly abandoned. Recessions are not a problem of insufficient demand. They are a problem of supply being misaligned with demand.

最善の金融政策とは、金融政策そのものの廃止である。世界経済が自然に回復できるように、中央銀行の総裁たちは長期休暇をとってもらいたい。
The best monetary policy, however, is no monetary policy at all, and central bankers should take an extended holiday so that the world economy can finally heal itself.

原文:https://mises.org/library/why-negative-interest-rates-will-fail

ツイッターに加筆・修正し転載。

2016年2月19日金曜日

〔翻訳〕スウェーデンの神話

スウェーデンのエコノミスト、ステファン・カールソン(Stefan Karlsson)による2006年の記事「スウェーデンの神話」(The Sweden Myth)より。

<解説>

北欧のスウェーデンは、税率の高い福祉国家のほうが経済は成長するあかしとして、よく引き合いに出される。しかし実際に成長を支えているのは、1980年代に実施された市場主義的な構造改革である。「税率が高いから成長している」のではなく、「税率が高いにもかかわらず成長している」というのが正しい。

<抜粋>

大恐慌中の1932年にスウェーデンで政権を握った社会民主労働党は、党首ハンソンの下、同国を「国民の家」に作り変えたいと考えた。これは同党が伊ファシスト党から取り入れた言葉である。
Until 1932, government spending had been kept below 10% of GDP in Sweden, but the Social Democrats, under their leader Per Albin Hansson, wanted to change this and remake Sweden into a "folkhem" ("people's home"), a term Swedish Social Democrats adopted from the Fascists in Italy.

1950年代初めになっても、スウェーデンはなお世界で最も経済的に自由な国の一つだった。政府支出の対GDP比は米国より低かった。
Even in the early 1950s, Sweden was still one of the freest economies in the world, and government spending relative to GDP was in fact below the American level.

1970年代に変化が訪れた。社民党左派出身のパルメ首相は、スウェーデンの社会主義化を推し進め、反企業的な規制を急速に増やし、社会保障税を大幅に増額した。
This changed in the 1970s after Olof Palme, from the left wing of the Social Democratic party became Prime Minister. Palme stepped up the socialist transformation in Sweden, rapidly increasing anti-business regulations and sharply increased payroll taxes.

カールソン首相(在任1986-91)の時代に市場経済的な改革が多く実施され、保守派のビルト首相(同1991-94)はスウェーデンが経済成長するための構造的な潜在能力を高めた。
Moreover, a number of free market reforms implemented during Ingvar Carlsson and conservative Carl Bildt (who was Prime Minister between 1991 and 1994) had helped raise the structural growth potential of the Swedish economy.

スウェーデン経済がわりあいに改善したのは、高い税率のためではなく、市場経済的な改革のおかげなのである。
Yet as should be clear, the relative improvement of performance is due not to high taxes (lower now than previously), but to free-market reforms.

原文:https://mises.org/library/sweden-myth

ツイッターに加筆・修正し転載。

2016年2月17日水曜日

〔本〕大竹文雄『経済学的思考のセンス』


格差拡大の神話


新自由主義的な経済政策のせいで日本でも所得格差が広がったといわれるが、その原因は単身世帯と高齢者の増加にすぎないと、客観的な分析に基づき指摘。単身世帯は一般に所得が少なく、高齢者は所得格差が大きいので、これらの世帯・人口が増えると社会全体の格差が広がったように見えるのである。所得再分配の強化を求めるなど賛同できない部分もあるが、格差拡大の神話を暴いたことは貴重。

<抜粋とコメント>

"世帯人員を調整して日本の不平等度を計算すると、九五年以降ほとんどその上昇はみられない。"
# 単身世帯はその他の世帯に比べ所得が少ない傾向があるため、単身世帯が増えると社会全体の所得格差が拡大して見える。

"日本の所得不平等度の上昇の原因の多くは、人口高齢化と世帯構造の変化にある。"
# 高齢者は所得格差が大きいので、高齢者の割合が高まると社会全体の格差が拡大して見える。

"日本では、実際には所得格差がそれほど拡大していないにもかかわらず、所得格差の拡大について大きな関心がもたれている。"
# 日本における格差への高い関心は、現実の所得格差とは別のところに理由がある。

"階層間の移動の可能性が高ければ、現在所得が低い人であっても、努力すれば高所得者になることが可能であるので、努力の結果格差が生じることを容認するはずである。"
# 欧州では貧しい人は格差を気にするが、米国ではしない。

"労働市場のさらなる整備と能力開発の促進を通じて、将来の逆転が可能な社会にしていくことが、若年層に拡がる閉塞感を打破するために必要"
# 格差への不満をなくすために必要なのは、再分配政策ではなく、規制緩和と減税。

*寸評はアマゾンレビューにも投稿。
*抜粋とコメントはツイッターより転載。

2016年2月16日火曜日

最悪の社会主義政策

# 中国を悪者にする資本主義国が、最悪の社会主義政策で世界経済を混乱に陥れる。その名は金融政策。
--ジム・ロジャーズ氏「中央銀行はパニック状態」
https://newspicks.com/news/1396390/

# 解約して今後は保険料の支払いをやめたいんですが、どこで受け付けてますか?
--年金給付減額あり得る=GPIF運用悪化なら−衆院予算委・安倍首相
https://newspicks.com/news/1397498/

# この環境で設備投資が強いとすると、むしろ将来の反動が怖いのではないでしょうか。
--日本経済の好状況に変化ない=10─12月GDPマイナスで官房長官
https://newspicks.com/news/1396834/

# 中国の市場介入は普通の国ではないとおっしゃる元総理もいますが、あんまり変わらない気がします。
--中国人民銀総裁、人民元市場「投機筋に主導させない」
https://newspicks.com/news/1396360/

# 国の年金に預けて株で損させられるよりは、いいんじゃないでしょうか。
--三井住友銀、普通預金金利を年0.001%に下げ メガバンクで初
https://newspicks.com/news/1397427/

ツイッターより転載。誤字等は修正。

2016年2月15日月曜日

マッツカート『企業家としての国家』


血税による企業家ごっこ


英国の大学で教鞭をとる著者は、経済の発展を支えるのは民間企業であるという常識にまっこうから異を唱え、「企業家精神をもって、経済成長の原動力となり、市場を立ち上げ、かつ、形作ってきたのは国家」(「日本語版への序文」)だという主張を繰り広げる。とんでもない暴論としかいいようがない。

著者はこう述べる。「民間セクターは国家に比べて企業家精神が弱い。国家の投資があらゆる不確実でリスクのある分野に及んでいるのに対して、民間セクターは画期的な工程や製品から逃げる傾向があり、国が不確実でリスクの高い分野に投資してくれるのを待っているのである」(第三章)

もし著者のこの主張が正しければ、国家が経済に関与しなかった時代には、経済は発展できなかったはずである。だがもちろん、それは事実に反する。

米国では第二次世界大戦の前まで、政府が研究開発に関与することはほとんどなかった。しかしすでに十九世紀末ごろには、世界一豊かな国となっていた。それを可能にしたのは、ライト兄弟、エジソン、テスラといった民間の偉大な企業家たちである。

いうまでもなく、ライト兄弟は世界初の有人動力飛行という輝かしい成功を収めた。著者はライト兄弟に言及している(同)ものの、触れていないことがある。それは、政府から資金支援を受けたサミュエル・ラングレーが飛行に失敗したことである。自転車屋のライト兄弟が自前で二千ドルの費用しか使わなかったのに対し、ラングレーは軍から五万ドルもの支援を受けていた

著者は「公的研究費が増加する一方で、民間研究費は減少している」(第一章)と述べ、民間企業の消極的な姿勢を批判する。しかしそれは政府が研究開発に乗り出した結果、民間企業を閉め出してしまったからである。

また著者は、国際政治学者チャルマーズ・ジョンソンの議論に基づき、戦後日本の高度経済成長は、旧通商産業省(現経済産業省)が行った「将来を見据えた数々の政策」によって達成されたと主張する(第二章)。これも誤った見方である。

たとえば通産省は1960年代、対日直接投資の解禁を前に、国産自動車会社が米国の大手メーカーに買収されないよう、トヨタと日産の両グループに統合しようともくろんだ。城山三郎の小説『官僚たちの夏』の世界である。

ところが通産省の意図に反し、ホンダやマツダなどの下位メーカーが抵抗して再編は進まなかった。この結果、国内市場で厳しい競争条件が維持され、かえってその後の日本の自動車産業の発展につながる。寡占体制だった米自動車産業の長期衰退と好対照である。

ジョンソンはこうした事情を無視して、著書『通産省と日本の奇跡』(邦訳1982年)で、「通産省の産業政策ゆえに、日本の自動車産業は発展した」と述べた。これに対し、経済学者で東大教授だった小宮隆太郎は「通産省の存在にもかかわらず、日本の自動車産業は発展した」というのが正しいと批判している(八代尚宏『新自由主義の復権』第三章)。

自動車に限らず、通産省の産業政策の対象になった業種よりも、対象外の業種のほうが成長を遂げたのは、経済学における通説である。

さて、著者は本書で、政府研究機関や政府の支援を受けた大学などによる研究成果をこれでもかと列挙し、だから国家は企業家として優れていると結論づける。この論法は、経済学における最も基本的な原理の一つを無視している。それは機会費用である。

機会費用とは、現実に選択することのできなかった選択肢(機会)がもたらす利得を指す。ある選択がメリットをもたらすとしても、それが適切かどうかは、別の選択によって得られるメリットの大きさと比べなければ判断できない。

本書でいえば、たしかに、政府の研究開発は一定の成果をあげたかもしれない。しかし、そこに投じた資金や人材を民間の研究開発に充てていれば、もっと大きな成果が早く得られたかもしれない。自由放任時代の米国で科学技術が大きな実を結んだ上述の事実に照らせば、むしろそうなった可能性が高いとみるべきだろう。

しかし経済学者であるはずの著者は、機会費用の考えを一顧だにせず、リスクを取る国家の勇敢さをひたすらほめたたえる。これはすなわち、血税を使った投資のコストとリターンについて、あれこれ深く考えるなと言うに等しい。バッキンガム大学の生化学者、テレンス・キーリーは「マッツカート教授にとって、政府が費用対効果に無関心なのは美徳なのである」とあきれたように書いている

あまつさえ著者は、「国はイノベーションに対してリスクの高い投資をしたのであれば、当然高いリスクに応じた見返りを受け取るべきである」(第九章)として、該当産業や技術分野から得られた特許権使用料などの利益の一部を政府が受け取るといった提案をする。さらに、企業が租税回避地などを利用して税逃れをしていると、それが合法であるにもかかわらず非難を浴びせる。

企業が課税強化などのコストを負担させられれば、最終的には値上げなどの形で消費者が負担することになる。なぜ、すでに取っている税金だけでは足りないのだろうか。もちろん、まともな答えなどあるはずがない。政府にも著者にも、リターンに見合ったコストという発想がないからである。他人の金に糸目をつけず、失敗しても給料が減るわけでもなく、果てしなく「企業家ごっこ」に打ち興じられてはたまらない。

本書の帯には、欧米の有名経済メディアによる推薦文が麗々しく印字されている。経済学のイロハを無視した大学教授が、国家が経済の主役になるよう訴え、ジャーナリズムがそれをほめそやす。これでは世界経済が迷走するのも無理はない。

アマゾンレビューにも投稿)

2016年2月14日日曜日

〔翻訳〕マルクスは反インフレ派

仏経済学研究者、ルイ・ルアネ(Louis Rouanet)による2015年の記事「レーニンとマルクスは健全貨幣を支持したか」(Lenin and Marx: Sound Money Advocates?)より。

<解説>

マルクスは、景気を刺激するためと称して政府・中央銀行が裏づけのない不換紙幣を増発することは資本家が自身を富ませるための手段にすぎないと批判し、国家が操作できない金(きん)を好んだ。マルクスの死と同じ年(1883年)に生まれ、国家なしに経済は運営できないと主張した国家主義者ケインズと異なり、少なくとも理論上、国家は死滅するものと考えていたマルクスらしい考えといえる。

マルクスとケインズのこの思想的対立は、戦前の昭和恐慌期、ジャーナリスト石橋湛山がケインズ流のインフレ政策を唱えたのに対し、マルクス主義経済学者である河上肇が、物価高で労働者の賃金が実質引き下げられるだけだと批判し、論争になった(長幸男『昭和恐慌』第九章)ことを思い出させる。

なお記事にあるように、レーニンのものとされる「資本主義制度を破壊する最上の方策は通貨を堕落させることである」という有名な言葉は、ケインズの著書『平和の経済的帰結』で初めてレーニンのものとして紹介された。ところがこの言葉は、レーニンの著作には見当たらないという。

レーニンはこの出所不明の言葉とは逆に、マルクスと同じく、少なくとも理論上は、「通貨を堕落させる」こと、つまりインフレ政策には反対していた。

現代日本の左派政党がアベノミクスのインフレ政策に反対するのは、意識しているかどうかはともかく、社会主義の本尊マルクスの考えと矛盾していない。そしてそれは意外にも、国家の経済介入を否定する自由主義の価値観とも一致し、正しい考えなのである。

<抜粋>

マルクスはさまざまな経済学文献を知っており、たいていは間違っていたものの、金本位制を好んだ点は正しかった。
Karl Marx had a wide knowledge of the economic literature and even though he’s usually wrong, he was correct in his preference for a gold standard.

レーニンは著作でインフレ(紙幣増発)に反対し、紙幣とはブルジョア資本家が自分自身を富ませるための手段とみなしていた。
As for Lenin, he was in his writings opposed to inflation and saw paper money as a means used by the bourgeois capitalists to enrich themselves.

マルクスによれば、もし金(きん)がすべて不換紙幣に取って代わられ、不換紙幣が過剰に発行されれば、物価は上昇する。…このためマルクスは、インフレ(紙幣増発)で生産を増やそうとすることに反対した。
According to Marx, if the total of gold is replaced by inconvertible paper money and the paper money is then issued in excess, prices will go up...Therefore, Marx opposed the use of inflation as a means for increasing production.

インフレ(紙幣増発)についてレーニンはこう述べた。「紙幣を際限なく発行すれば投機をあおり、資本家に巨富を得させ、必要な生産の拡大をはなはだしく妨げる」
Of inflation he said: The unlimited issue of paper money encourages speculation, allows the capitalists to make millions, and places tremendous obstacles in the path of the much-needed expansion of production;

ひとたび権力を手にするや、ボルシェヴィキ(レーニン派)はハイパーインフレを引き起こした。…マルクス主義は理論にとどまるうちは反インフレ派だが、実践ではひどいインフレ派になる。
However, once they were in power, the Bolsheviks were responsible for hyperinflation...We should also say: as long as it remains theoretical, Marxism is anti-inflationist, but when it is put into practice, it becomes violently inflationist.

原文:https://mises.org/library/lenin-and-marx-sound-money-advocates

ツイッターに加筆・修正し転載。

2016年2月13日土曜日

官庁だと美談

# 民間企業だとたちまち過労死、ブラック企業と叩かれるような話が、官庁だとなぜか美談にされてしまう。不幸なことです。
--TPP合意にかけた或る外交官の死
https://newspicks.com/news/1392259/

# 議員はこういう人のほうが人畜無害でいいのに、残念。清廉高潔の士ほど怖いものはありません。
--自民 宮崎謙介議員 女性関係報道で議員辞職へ
https://newspicks.com/news/1393095/

# 異次元緩和のさらに斜め上を行く次の一手を探るため、某中央銀行が研究チームに接触したとかしないとか。
--アインシュタイン予言の「重力波」、米で初観測
https://newspicks.com/news/1392454/

# 脱税は違法だからダメ。節税は合法だけどダメ。結局すべてダメ。
--タワマン節税に国税庁が待った 高層階に課税強化検討
https://newspicks.com/news/1392632/

# マイナス金利は本来、円安・株高になる政策だから大丈夫、騒ぐなという記事。いや、その円安・株高こそ、あとが怖いのです。
--円高・株安は断じて「アベノミクスの限界」ではない!~中国の大不況が原因なのに、政権批判に転じるマスコミは破綻している
https://newspicks.com/news/1392641/

ツイッターより転載。誤字等は修正。

2016年2月12日金曜日

〔本〕スウィフト『ガリバー旅行記』


帝国主義を糾弾


登場人物の口を通して逆説的に語られる、当時の英国の帝国主義的な外交政策に対する仮借のない批判が見事。「よその国が……国内の派閥争いで揺れていたりするときは、侵略しても正当な行為と見なされる」とは、人道を口実とした現代の軍事介入にもあてはまる。正義を行いたいのなら、他人の懐から取った税金ではなく、自前のカネでやるべきである。

<抜粋とコメント>

"国家の税収は一年に五、六百万ポンドと最初に言っておきながら、後に支出の話になると、その二倍以上の額にふくらんだのは、おまえの記憶の誤りにちがいない"
# 財政の説明に首をかしげる巨人国の王。そりゃそうだ。

"よその国が飢饉により衰弱したり、疫病により多くの人民が死に絶えたり、国内の派閥争いで揺れていたりするときは、侵略しても正当な行為と見なされる。"
# いわゆる人道的介入。馬の国で人間の戦争についてレクチャーするガリバー。

"よその国民が貧しく無知な場合は、その野蛮な生活から救い出して文明化してやるためなら、侵略して半分を殺し、残りの半分を奴隷としても許される。"
# いわゆる体制転換。

"わたしはけっして英国を非難するつもりはない。植民地経営の知識、配慮、正義において、英国は全世界の手本となるべき存在なのだから。"
# 自国の植民地支配は「良い支配」だったと主張する人々は、どこにでもいる。

"軍人はもっとも名誉ある職業と考えられている。…これまで何ひとつ自分に害を加えたことのない同種族の仲間を、できるだけ多く平然と殺すために雇われたヤフーなのだから。"
# 女子供の虐殺や市民の「誤爆」をいとわない軍高官に、この名誉を。

*寸評はアマゾンレビューにも投稿。
*抜粋とコメントはツイッターより転載。

2016年2月10日水曜日

政治に希望があるとすれば

# 高値で買う人がそれなりに多くいなければ、転売屋は成り立ちません。転売屋が繁盛するのは、主催者がチケットの値段を安く設定しすぎることに原因があるのです。
https://twitter.com/daka5020/status/696694554611699717

# バブルが土地や株に広がるか、ある日円が売られて国債相場が急落するか。どっちにしても良いことはなさそう。せめてスリルを楽しみましょう。
--長期金利、初めてマイナスに 一時マイナス0・005%
https://newspicks.com/news/1388052/

# 政治に希望があるとすれば、それは政治そのものの力をできるだけ小さくすること。気づいてがんばってくれるよう祈りましょう。可能性は小さくとも。
--今井絵理子氏「政治は希望だと思います」〜参院選比例代表候補の公認を受け会見
https://newspicks.com/news/1388382/

# 会社には2つの種類があります。大赤字になると政府から税金で助けてもらえる会社と、助けてもらえない会社。
--日本マクドナルド 過去最大の赤字に
https://newspicks.com/news/1388277/

ツイッターより転載。誤字等は修正。

〔本〕小嶌典明『労働法改革は現場に学べ!』



保護がもたらす不幸


「弱者」である労働者の保護を目的としたさまざまな立法は、労働市場を硬直化させ、むしろ労働者を不幸にしている。派遣法を中心に労働法制がもたらすゆがみを具体的に指摘し、改善を提案する。

<抜粋とコメント>

"契約は、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致すること、つまり双方の「合意」によって成立する。労働契約も、その例外ではない。"
# 契約の自由は近代法の大原則。曲げるには慎重を期す必要がある。

"「労働契約の申込みみなし」規定による採用の自由の制限は、憲法22条1項が保障する「職業の自由に対する強力な制限」に当たる"
# あいまいなルールに違反すると、派遣社員の正社員化を実質義務づけ。これでは怖くて派遣社員を雇えない。

"役員を除く雇用者に占める派遣のシェアは、2%台…にとどまっている。…非正規全体でみても、派遣は、その6・1%を占めるにすぎない。"
# そもそも非正規雇用の中心は派遣社員ではなく、リベラル文化人から評判のよくない主婦パート。

"「自分にできないことは、他人にも強制しない」。この最低限の道徳に反する、異常な世界がここにはある"
# 民間企業には許されない「雇い止め」が、法律を作った政府には認められている。

"いかに小規模事業者といえども、事業者の組合に対して…団交応諾命令まで認めることは明らかに行き過ぎ"
# 労働委がコンビニ加盟店オーナーを「労働者」とみなし、セブンやファミマはその組合との団交を拒否するなと前代未聞の命令をした件。

*寸評はアマゾンレビューにも投稿。
*抜粋とコメントはツイッターより転載。

2016年2月8日月曜日

チケット転売は悪か

# 転売を認めなければ、急用で行けなくなるリスクを恐れ、チケットを買わない人が増えるでしょう。金券ショップだけを認める合理的な理由はありません。
--定価5万円が21万円…チケット転売市場急拡大
https://newspicks.com/news/1385493/

# マンションは建設ラッシュ、不動産会社は笑いが止まらないとか。目先の景気浮揚には絶大な効果。長期の繁栄を犠牲にして。
--「利息」くれる住宅ローン デンマークのマイナス金利
https://newspicks.com/news/1384596/

# 金融緩和の後押しで、シェールガスは一時大ブームに。それが今ではこのありさま。マネーの洪水がなければ、もっと堅実な発展をしていたでしょう。
--シェール革命に沸いたバッケン、宴の後の惨状
https://newspicks.com/news/1385472/

# 廃棄されず人道支援組織に回された食物を横流しする者が出るのは明らか。スーパーは値崩れを防ぐため仕入れを減らし、生産が減り、結局消費者と飢えた人を不幸にします。
--フランス スーパーに対し賞味期限切れ食品の廃棄を公式に禁止
https://newspicks.com/news/1384185/

# 原発事故の支援でもらった税金を流用して、値引き合戦を挑む。これは自由化とも市場競争ともいえません。民業圧迫です。
--東電、料金プラン追加へ 自由化で参入する新規組に対抗
https://newspicks.com/news/1385247/

# 高熱に耐える再突入体がなければ弾頭は燃え尽きるだけ。虎の子のロケットを大陸間弾道ミサイルとして使おうとするはずがない。冷静な指摘。
--「事実上の弾道ミサイル」という表現の陥し穴
http://gohoo.org/16020802/

# ふだんマスコミの横並び体質を叩く人たち、どこ行っちゃったんでしょうか。
--「北朝鮮ミサイル発射」 現代に蘇る”大本営発表”報道
http://gohoo.org/16020801/

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2016年2月7日日曜日

中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』


自壊というウソ


2008年のリーマン・ショック直後に出版され、反資本主義ブームのはしりとなった本。著者は、資本主義が「世界経済の不安定化」「所得や富の格差拡大」「地球環境破壊」といった問題を引き起こしたと非難し、政府による規制強化を求める。だがそれらの問題はいずれも、自由放任的な資本主義ではなく、政府の市場介入が招いたものである。

まず、世界経済の不安定化について著者は、金融市場で借りた低利の資金を元手に高い収益をめざす「レバレッジ経営」や、巨額の投資で相場が上がるとそれに煽られてさらに相場が上がり、自分が期待した収益が実現する「予言の自己実現」がバブルにつながったと批判する(第二章)。

バブルに酔った金融機関や企業の軽率な経営判断は、とがめられなければならない。しかしバブルのそもそもの原因を作ったのは、政府・中央銀行である。リーマン・ショック以前に米国の金利を長期にわたり低く引き下げたのは中央銀行である連邦準備制度だし、人々の期待だけで株式相場が上がり続けることはできない。株を買うにはカネがいる。連邦準備制度によるマネーの氾濫がバブルを可能にしたのである。

しかも自己責任を問われるべき金融機関や企業は、一部を除き、政府の判断で国民の血税により救済された。これはどうみても自由放任的な資本主義ではない。

次に、所得や富の格差拡大について著者は、国境を超えるグローバルな資本主義においては、ローカルな資本主義の場合と違い、政府による利益の再分配ができない。したがって企業のCEO(最高経営責任者)や大株主のような「持てる人たち」は巨額の利益を獲得するかもしれないが、その「おこぼれ」は労働者には回ってこないと主張する(同)。

しかし著者は、政府による再分配が始まったのは、産業革命以降、自由放任的なグローバルな資本主義によって経済が発展した後だということを忘れている。富を再分配するためには、まず富を生み出さなければならない。政府にそれはできない。

所得や富の格差は、それが自由な競争の結果である限り、何も悪いことはない。消費者の望む商品・サービスを多く提供した生産的な企業家・投資家が報われ、手にした資金を再び事業に投じることで、経済をさらに繁栄させる。

格差を過剰に拡大させるのは、ここでも政府・中央銀行である。中央銀行が社会にマネーをあふれさせると、とくに生産的な活動が行われていないにもかかわらず、土地や株式といった資産の価格が上昇する。これが富裕層の富を膨らませる。一方で資産をもたない庶民は、インフレで生活コストが上がり、相対的に貧しくなる。

最後に、地球環境破壊について著者は、グローバルな資本主義においては、ローカルな資本主義と違い、どれだけ環境を汚染し、資源を無駄遣いしようとも、周辺住民・消費者の反発を招きにくく、直接に企業の経営にマイナスに働くとは限らない。また政府による規制もかけにくい。したがって環境破壊に歯止めがかからないという(同)。

しかし、現在よりずっとローカルだった高度成長期の日本も、環境破壊によりさまざまな公害が発生していた。グローバル経済から閉ざされたかつての社会主義国で、資本主義国以上に激しい環境破壊が行われていたこともよく知られる。環境破壊の原因は、資本主義がグローバルかローカルかとは関係がない。

環境破壊の本質は、経済学でいう「共有地の悲劇」である。財産が特定の個人によって所有されるのではなく、不特定多数者によって共有されていると、財産を大切に扱う意欲もわかないし、傷つけまいとする注意も怠りがちになる。このため財産が無駄遣いされたり、ダメにされたりする。

ポイントは個人の所有権にある。したがって、大気汚染を防ぎたいのであれば、空にも所有権を認めればよい。たとえば私有地の上空は、その土地の所有者のものとする。自分の空はどれだけ汚しても構わないが、他人の空を汚してはいけない。現実には汚染を自分の空だけにとどめるのは無理だから、所有者は汚染物質を無害化するサービスを利用し、最初から空を汚さないようにするだろう。

荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、センサー技術などの発達した現代では、それほど難しいこととは思われない。上空を飛行機などが通過する場合は、所有権を売買するなり、使用権を認めるなりすればよい。

やや脱線したが、ようするに、環境破壊が起こるのは自由でグローバルな資本主義のせいではない。領空、領海、国有地、あるいは公空、公海といった名目で、政府が個人の所有権を排除しているためである。

なお著者は、日本には古来自然を慈しむ文化があったとして、鎮守の森と呼ばれる古くからの原始林は「聖なる土地として樹を伐ること自体が禁止されていた」(第五章)と述べる。だがそれは誤りである。鎮守の森には頻繁に人がかかわっており、近隣の農民が落葉や枝葉を肥料や燃料として採取したり、マツタケを収穫する権利を売買したりしていた。社殿の修理などに必要な木材を得るために植栽することも少なくなかった。鎮守の森に手が入らなくなったのは、戦後、薪や堆肥を使わなくなり、伐採や落葉の採取の必要がなくなったからにすぎない(田中淳夫『森と日本人の1500年』第一章)。

以上述べたとおり、反資本主義ブームの嚆矢といえる本書のおもな主張は、どれも事実に反する。資本主義は自壊したのではない。政府によって破壊され、今も破壊されつつあるのだ。

最近量産される反資本主義本の数々は、ほとんど本書の延長線上にあるといってよい。なにしろ本書では最近流行のピケティやカール・ポランニー、ベーシックインカムまですでに言及されているのだから。その主張が的外れなところも共通している。

長年信じた新古典派経済学を疑い、大胆な「転向」を遂げた著者の態度には、知的良心を感じる面もある。しかし、もし新古典派経済学が間違っているとしても(実際、多くの部分で間違っているのだが)、政府による規制強化が正しい答えということにはならない。誤った診断に基づいて正しい処方箋は書けない。

アマゾンレビューにも投稿)

2016年2月6日土曜日

〔翻訳〕ブラック企業は脱貧困の道

経済学者、ベンジャミン・パウエル(Benjamin Powell)による2014年の記事「ブラック企業は脱貧困の道」(Sweatshops: A Way Out of Poverty)より抜粋。第三世界について述べたものだが、日本のブラック企業問題も本質は同じ。どんなに劣悪な労働環境でも、失業よりはましだと労働者自身が考えているのであれば、ブラック企業をなくしても労働者のためにならないどころか、失業を強いることになる。

<抜粋>

現代の第三世界で、ブラック企業はそこで骨を折って働く労働者のためになっている。生活水準の向上につながる資本蓄積の過程に役立ってもいる。産業革命期における英米の工場のように。
 I find that sweatshops in the third world today benefit the workers who toil in them and aid in the process of capital accumulation that leads to higher living standards in much the same way that factories in Great Britain and the United States did during the Industrial Revolution.

有名メディアで報道されたブラック企業があるどの国も、人口の10%以上が1日あたり2ドル以下で暮らしている。…しかしブラック企業は83社中77社で2ドルを上回った。
In every country where the sweatshops were located, more than 10 percent of the population lived on less than $2 per day. In more than half of the countries, more than 40 percent did. Yet, in 77 of the 83 cases, the sweatshop wages exceeded the $2 a day threshold.

ブラック企業は、そこで働く労働者に、ましな選択肢を与えている。…経済発展に直接つながる条件をもたらしてもいる。資本、技術、人的資本を育成する機会などだ。
In short, sweatshops provide the least-bad option for the workers who work in them. But sweatshops are better than just the least-bad option. Sweatshops bring with them the proximate causes of economic development — capital, technology, and the opportunity to build human capital.

ブラック企業を批判する団体は例外なく児童労働を非難し、児童労働で作られた製品を法律で禁じるよう求める。しかし経済の発展過程こそ児童労働に対する最善の解決策だ。…家族は貧困を抜け出すと、子供を労働から引き揚げる。
Anti-sweatshop groups universally condemn child labor and call for laws banning products made with it. But the process of development is the best cure for child labor...As families escape poverty, they remove their children from the labor force.

ブラック企業反対運動が唱える手段の多くは、貧困撲滅という目的と矛盾する。代わりに、私有財産権と経済的自由の環境を擁護し、ブラック企業を含む経済発展の過程を促すことこそ、最大の貧困対策だ。
My book is concerned with ending poverty in the third world. The main lessons are that many of the means of the anti-sweatshop movement are incompatible with that end. Instead, embracing an environment of property rights and economic freedom that allows the process of economic development, which includes sweatshops, to occur is the greatest cure for poverty.

原文:https://mises.org/library/sweatshops-way-out-poverty

ツイッターに加筆・修正し転載。

2016年2月5日金曜日

お役所CIA

# 世の中に「絶対安心」な制度などありません。それでも金本位制は、政治にマネーの操作を任せるよりもはるかに安心です。
--金本位制は絶対的に安心できる制度なの?
http://thepage.jp/detail/20160204-00000014-wordleaf

# 米外交官ジョージ・ケナンいわく、「ソ連が明日、大洋の水面下に沈むようなことがあれば別の敵を発明せねばなるまい」。政府にとって外敵の脅威はなくては困るもの。
--真実なくして、自由はありえない
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-ef65.html

# 日銀だけに頼らず、規制緩和や産業の新陳代謝を進めよと正しい指摘。もっとも政府がそれをやりたくないからこそ、日銀に頼るのでしょうけど。
--銀行を裏切って導入するマイナス金利という劇薬
https://newspicks.com/news/1381140/

# 情報を大量に集めすぎて、必要な情報を見つけられなくなったCIA。お役所にありがちな話。
--CIA元エージェント:米国による欧州盗聴はテロ対策の助けとはならない
http://jp.sputniknews.com/us/20160201/1524527.html

# 大富豪の金融業者と弱者の味方を任ずるリベラル政治家の激しい対立…という茶番の舞台裏。
--米大統領選の政治献金 ソロス氏がヒラリーに7億円
http://forbesjapan.com/articles/detail/11213/

ツイッターより転載。誤字等は修正。

マルクス主義という宗教



マルクス『資本論』への私のレビューに関するやりとりより。
レビュー本文、相手の方のコメントを含む全文はこちら

2016/01/30
木村 貴さんのコメント:
私がここで書いたマルクス批判は、ごく普通の日本人にすぎない私の独創ではなく、文中にあるように、ベームバヴェルクによるものです。

ベームバヴェルクはマルクスに比べれば一般的な知名度ははるかに劣りますが、マルクスに劣らず、「弱者」のことを案じ、「理性」を信じ、「資本主義」の研究(と政治家としてその実践)に生涯を捧げました。そして彼や彼の後輩にあたるミーゼスが予言したとおり、マルクス理論に立つ社会主義は崩壊しました。

学者の偉大さは、知名度やカリスマ性よりも、理論の正しさによって測られるべきです。


2016/01/30
木村 貴さんのコメント:
ある思想家に関する本が「巷に溢れかえっている」ことは、その思想が正しいことの証明にはなりません。

マルクスに対する「泡沫思想家の局所的な批判」は消え去るどころか、マルクス理論の中核である労働価値説が誤りであることは、いまや経済学の常識です。

生前のマルクスは、上記のとおり、労働価値説やそれに基づく搾取理論に対する批判に答えませんでした。これは批判に対する「創造的あるいは生産的」態度とはいえません。


2016/01/30
木村 貴さんのコメント:
論理的に説明できない主張を信じることを、私は否定しません。

しかしそれは、科学ではありません。宗教です。詩歌かもしれません。

マルクスの本が宗教書か詩集として売られているのなら、私は批判しません。


2016/02/02
木村 貴さんのコメント:
マルクスの主張が「論理的に非常に明晰で、緻密かつ堅牢」であると言葉だけでおっしゃっても、説得力はありません。労働価値説、剰余価値説に対する批判を、ご愛読されているマルクスの著作に基づいて論破されれば済むことです。

偶像をけなされて愉快でないのはわかりますが、マルクスを擁護されたいのであれば理詰めの議論によって行なうべきであり、思想的にバイアスがかかっているとかいうレッテル貼りは、感心しません。

フロイトの主張が学問の名に値しないことは、デーゲン『フロイト先生のウソ』(文春文庫)をご参照ください。

コメントしてくださり、ありがとうございました。

2016年2月4日木曜日

〔本〕黒田基樹『百姓から見た戦国大名』


侵掠のための国家


戦国大名を英雄として描くテレビドラマなどでは語られない、驚くべき事実。戦国大名を度重なる戦争に駆り立てたのは、戦国時代に慢性化した飢饉だった。飢えから逃れたい民衆(百姓)の後押しを受け、戦国大名は攻め入った敵国で掠奪の限りを尽くした。現代日本国家の起源は、侵略戦争を目的に形成された戦国大名の領国にあると著者はみる。一方、民衆は自分たちを守る能力のない大名をあっさり見捨て、より有能な大名に乗り換えていたという。国家や国防の本質について考えさせてくれる本。

<抜粋とコメント>

"戦国大名があれほどまで侵略戦争を続けた根底には、慢性的な飢饉状況があったとみても、的はずれではなかろう。常に侵略戦争を繰り広げていた武田信玄や上杉謙信は、その典型"
# 飢えと侵掠。市場なき社会の悲劇。

"御国のために、という……論理は、戦国時代に、戦国大名が領国内の村々に、大名の戦争に協力させようと、生み出したものだった。"
# お国のために死ねという言葉はあっても、生きろという言葉はない。

"村は…その領国に住んでいる、というそれだけで、大名の戦争に動員される事態に直面するようになった。…現代の私たちが認識する国家は…この戦国大名の国家から展開してきたもの"
# 国家とは戦争の申し子。

"現在みられるような国家への奉公=忠節が、決して国家が本来的に備えていたものではなく、あくまでも歴史的に形成されたもの"
# 国家に忠誠を尽くすのは、全然当たり前ではない。

"村にとっては、自村の存立こそが最大の課題であり、そのためには…誰であってもいいから、ただ強い領主に従うのみといって、村の存立を保障してくれる大名・領主を選択した。"
# 無能な政府より有能な防衛会社を。

*寸評はアマゾンレビューにも投稿。
*抜粋とコメントはツイッターより転載。

2016年2月3日水曜日

規制あるところ腐敗あり

# 口座手数料を取るからには、いざというとき必ず払い戻しに応じてもらわないと。「いっぺんに来られても無理です」などと言わずに。
--普通預金に企業から口座手数料 三菱UFJ銀検討 マイナス金利受け
https://newspicks.com/news/1377074/

# 普通預金とは本来、口座手数料を取る代わりに払い戻しを保証するサービスでした。
--自由主義通信: ウエルタ・デ・ソト『通貨・銀行信用・経済循環』
http://libertypressjp.blogspot.jp/2016/01/blog-post_23.html

# 法律に可と書いてなければグレーになる日本。原則自由を保障する憲法と完全に矛盾します。この恥ずべき事実を国民に周知することは、特区以上に大切でしょう。
--“最強のドリル”で岩盤規制に穴を開ける
https://newspicks.com/news/1377083/

# 規制あるところ必ず腐敗あり。万古不易の法則です。
--甘利明氏の元秘書に「ビザ口利き依頼」 業者証言
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/02/amari-visa_n_9144248.html

# 政府が許さないほうの麻薬の話。
--【清原容疑者逮捕】捜査員が自宅へ踏み込むと…左手には注射器と吸引用のストロー 警察車両内では滝のような汗
http://www.sankei.com/smp/affairs/news/160203/afr1602030057-s.html

ツイッターより転載。誤字等は修正。

2016年2月2日火曜日

〔本〕八代尚宏『新自由主義の復権』


「規制緩和は悪夢」のウソ


労働や医療をはじめとする規制緩和を強く主張し、既得権益を守る側から目の敵にされている著者の本。「市場の失敗」を是正する政府の役割をあっさり認めるなどやや物足りない部分はあるが、世間で喧伝される「規制緩和は悪夢」という主張が誤りであることを、批判を恐れず明確に説く。

<抜粋とコメント>

"夫と妻がともに働くか、あるいは定年後も働き続けるかなど、それぞれの家族の自主的な判断に基づく…所得格差は社会的に是正すべき問題とはいえない。"
# 政府が本気でダイバーシティを信じるのなら、画一化はやめて。

"サラリーマンが加入する厚生年金は、勤労時に高賃金であった者ほど高い保険料を負担し、給付額もそれだけ多い。つまり、勤労時の所得格差を引退時にも持ちこむ制度である。"
# 格差を是正するはずの制度が格差を固定。

"派遣法の規制緩和の目的は……労働者保護のためのILOが、欧州の高い失業率を改善するために、不安定であっても雇用機会を増やすことが必要と認識したことに基づいている。"
# 規制緩和は労働者いじめのウソ。

"官が利用者の需要を予測し、それに合わせて新規のタクシー台数を認可するという、社会主義経済そのものの論理"
# 政府は本音では社会主義が大好き。

"普通の市場メカニズムが、タクシーについてはまったく働かず、空車の山ができ、運転手の所得が大きく低下した。参入規制がなくなっても、タクシー料金の認可制が残されていた"
# 規制緩和の不徹底がまねいた悲劇。

*寸評はアマゾンレビューにも投稿。
*抜粋とコメントはツイッターより転載。

2016年2月1日月曜日

質を伴わない雇用増

# もし今後スイス国民の、いや人間の本質がガラリと変わらない限り、ベーシックインカムの額はどんどん引き上げられ、やがて別の何かで置き換えようという話にまたなるでしょう。
--働かなくても毎月30万円もらえる所得保障制度導入の是非を決める国民投票がスイスで行われることに
https://newspicks.com/news/1373789/

# アベノミクスでたしかに雇用は増えました。でも雇用とは、穴を掘って埋める仕事でも増えるものです。質を伴わない雇用増は、むしろ経済の効率を悪化させます。
--アベノミクスで放たれた「4本の矢」
https://newspicks.com/news/1373465/

# 日本がこんなひどいことやるわけない? 少なくとも終戦直後には新円切替という同じことをやりました。
--北朝鮮の銀行は信用ゼロ…無謀な貨幣改革がきっかけ
http://dailynk.jp/archives/60654

# 麻薬が効かなくなってきたら劇薬。絶対に許されない自然治癒。
--劇薬に頼るしかなくなったアベノミクス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47677

# チャーチル、スターリンの映る歴史ドキュメンタリーあたりから始めましょう。
--喫煙シーン含む映画を「成人向け」に WHOが勧告
http://m.cinematoday.jp/page/N0080024

ツイッターより転載。誤字等は修正。