2017年1月16日月曜日

笈川博一『古代エジプト』



官尊民卑の末路

官僚の仕事とは、政府の力と権限を強めるため、民間から少しでも多くの税金を取り、規制を増やすことである。だから官僚の力が増すほど経済の活力は弱まるし、若者が競って官僚をめざす国は衰退に向かう。古代エジプトもそうだった。

本書によると、古代エジプトで王に仕える書記は特権階級だった。パピルスに書かれた「書記の勧め」という文章では、地位の高い書記が弟子に対し、書記になると他の職業よりもいかに楽ができて金になるか、という利益を強調している。

高級官僚の書記はこの文章で、他の職業をさんざんにけなす。陶器師は泥だらけ、靴屋の手は真っ赤で悪臭がする。商人は忙しく、出張しなければならず、税金を取られる――。自分はその税金で暮らしているくせに、全然悪びれていない。

書記は他の職業をけなした後、「しかし書記だけはこれらすべての生産高を記録する」と誇り高く述べる。そして弟子に向かいこう諭す。「もしお前に頭があるなら、書記になれ」「書記になれば楽で豊かな生活ができる。税金も納めない」

書記をめざす生徒は多くの文字や文体を覚えるため、背中に教師のムチを受けながら昼も夜も寝ないで学んだ。やがてエジプトの経済力は衰え、アジアが鉄器時代に入った後も青銅器文化にとどまった。官尊民卑の社会と無縁とは思えない。

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