2017年1月2日月曜日

トッド『グローバリズム以後』


保護貿易のイデオロギー

自然科学を話題にするとき、万有引力の法則を「イデオロギー」と非難したなら、まともな知識人とはみなされまい。ところが経済の話になると、自由貿易の理論をイデオロギーと攻撃する人物は笑われるどころか、逆にもてはやされる。

著者トッドによれば、現在世界中に「自由貿易こそが問題の解決策だと考えるイデオロギー」が広がっている。このため途上国に安価な労働力があると、賃金の高い先進諸国の人々は無用だとみなされ、雇用問題を引き起こしているという。

トッドのこの主張は誤りだ。たしかに安い輸入品が増えると、競合する国内企業は経費削減で賃金や雇用を減らす。しかしこれは事実の一部にすぎない。国民全体では安い輸入品や値下がりした国産品を買えるので、生活や仕事が楽になる。

もし自由貿易が国を貧しくするなら、戦後自由貿易を推し進めた日本は今頃、極貧にあえいでいるはずだ。しかし事実は逆で、世界有数の豊かな国になった。分業が経済の効率を上げ、繁栄をもたらす原理は、国内でも世界でも変わらない。

トッドは保護主義を「経済的に結びつく人たちが連帯しあう領域を確保すること」と称賛する。だが保護貿易の狂ったイデオロギーを信じない限り、一方が高い国産品を売り、他方がその購入を実質強制される関係を「連帯」とは呼べない。

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