2017年3月15日水曜日

進藤榮一『アメリカ帝国の終焉』


資本主義はアジアで蘇る

資本主義は終焉しつつあると一部の論者は語る。しかしそれは神話にすぎないと著者は言う。欧米主導の資本主義は衰退の危機に瀕しているかもしれないが、「もう一つの資本主義が誕生し、蘇生し、興隆しつづけている」。その舞台はアジアだ。

これまで後発国の発展は、先進国を追い上げるのがせいぜいとされてきた。しかし最近は生産のモジュール化で、一気に追い抜く戦略が可能になった。先端技術を選択的に利用しながら後発技術を全稼働させ、膨大な人口のニーズを満たす。

代表は中国の山寨企業だ。広告や流通にカネをかけず、先端技術は日本企業から部品として入手。特許の縛りを巧みに回避し、庶民に商品を安く早く売り込む。精巧だが値段が高く、巨大な途上国市場に食い込めない日本製品とは対照的だ。

勃興するアジアを牽引する中国の躍進は、中華帝国の再来ととらえがちだ。しかし、それは誤りだと著者は言う。なぜなら中国の興隆は単体としてではなく、アジアの他の国々と相互に連鎖・依存・補完することで可能になっているからだ。

中国で人民解放軍と資源エネルギー産業との軍産複合体が生まれ、南シナ海での膨張主義的行動につながっているのは事実。だが資源開発を日本など周辺諸国とともに進めれば、膨張主義の拡大を防ぐ抑止力になると著者は正しく指摘する。

米政府・中央銀行によるマネー濫造が生んだ「カジノ資本主義」を規制緩和のせいにするなど、俗説をそのまま受け入れた誤りも散見されるものの、「資本主義の終焉でなく、資本主義の蘇生だ」という洞察の鋭さに比べれば瑕瑾にすぎない。

0 件のコメント:

コメントを投稿