2017-05-20

蔵研也『18歳から考える経済と社会の見方』


イノベーションを妨げる日本

保守やリベラルの言論人は、貧困問題を嘆く。それでは生活水準を高め、貧困をなくすにはどうしたらいいか。経済学者の著者は、イノベーションが生活水準の向上を可能にすると明快に説く。

多くの言論人は、市場経済に対する規制や「弱者」の保護を支持する。しかしそれらはイノベーションを妨げ、むしろ貧困層を不幸にする。本書がおもな読者として想定する若者に限らず、経済学の正しい知識を知ることによって、おためごかしの議論に惑わされないようにしたい。以下、第5講より抜粋。

バブル後の日本の低成長の一番の問題は、政府による規制のあまりの多さ、複雑さのせいです。政府の規制はあらゆる分野のイノベーションを窒息させ、本来なら可能な経済成長を禁じています。(p.109)

誤った投資の維持や、あるいは既存の産業構造の維持をすることでは、私たちの生活は豊かになりません。シュンペーターの言葉を借りるなら、イノベーションを伴う経済成長には、既存産業の「創造的破壊」が必要なのです。(p.114)

ケインズ政策によって、不況期以前の産業構造を維持し続け、同時に完全雇用を実現しても、それは…むしろ、それ以前の消費・生産構造を頑なに維持する力になり、それ以降の産業振興を阻害していることでしょう。(p.115)

二〇一五年の企業決算を見ると、上位に入っているのはドコモやKDDI、ソフトバンクなどといった、政府から電波利権を与えられた権益産業です。…三大メガバンクの銀行業にしても、許認可制度によって完全に保護されています。(p.116)

日本の政策は既存の特定職種の保護であって、労働者個人の保護ではありません。転職リスクの高さが、日本の名門企業の就活人気を数十年にわたって維持し続け、日本の成長率をヨーロッパの半分にしているのです。(p.116)

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