2016-05-13

寺久保光良『「福祉」が人を殺すとき』


官僚福祉の非人間性

美しい理想とされる福祉国家。だが官僚主義の害毒は、人の命すら奪う。生活保護の申請を受け付けてもらえなかった母子家庭の母親が餓死した衝撃的な事件を通じ、官僚福祉の非人間性を告発する。

<抜粋とコメント>
"〔餓死した女性に〕サラ金業者はまがりなりにも金を貸した。一方、福祉事務所は…助けを求めたその手を…つき離しただけ"(p.73)
# 九年も前に別れた夫から子供の養育費について書類をもらって来いと要求。

"生活保護の申請を受理していなければそういうこと〔=法的争い〕にはならない。そこを行政の側は最大限に活用"(p.123)
# 窓口相談で保護の申請を押しとどめれば、何かあっても役所の「汚点」にならない。

"監査の二か月も前から、その資料づくりで毎日残業。…終わったら終わったで、要望だとか指摘だとか…そして報告。一年のうち半年はそれで追いまくられます"(p.142)
# 書類作成が目的化。官僚主義の本末転倒。

"いままで結構福祉に燃えていたような人たちが、この体制の中で、母子家庭を追いかえすとかを平気でやるようになっていく"(p.170)
# 不正受給の防止が仕事に。放漫財政のしわ寄せ。政府に資金を頼る宿命。

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