2017年8月6日日曜日

自滅する米国

集団的自衛権や環太平洋経済連携協定(TPP)を通じ、日本政府は米国と政治・経済的つながりをいっそう深めようとしている。まるで米国と組んでさえおけば、未来永劫安泰だと考えているかのようである。危うい態度といわざるをえない。頼りにしている米国自身、今にも滅びの坂を転げ落ちようとしているからである。

原著が米国でベストセラーとなった著書『コールダー・ウォー』(渡辺総樹訳、草思社)で投資戦略家マリン・カツサは、米国の没落がもはや避けられないと説く。鍵となるのは米ドルの価値である。

戦後、米国の覇権を支えてきたのは強いドルであった。ドルは世界中の取引で利用されたから、どの国も準備通貨として欲しがった。米国はドル札を刷るだけで、世界中から何でも欲しいものを手に入れることができた。巨額の軍事費も借金で賄うことができた。

しかしながら無から有を生み出すこの特権は米国を傲慢にし、肝心の経済力を衰えさせた。今では累積財政赤字は対GDP(国内総生産)100%を超え、製造業は衰退し、不況からの回復力も弱くなった。不況から脱しようと政府が金利を無理に押し下げたために、債券市場にバブルをもたらしている。

カツサは警告する。「この傾向が続けばドルは世界の準備通貨の地位を失うことになる。つまりドル資産は売りに出されるのである。そうなればドルの価値は暴落する」。ハイパーインフレの恐れに加え、債券相場の暴落で銀行に経営危機が広がる可能性もあるという。

これまでドルの価値を支えた大きな要因は、石油取引である。1970年代、米政府はサウジアラビアに対し、同国を防衛する見返りに石油販売をすべてドル建てにし、貿易黒字で米国債を購入するよう約束させた。他の産油国も追随し、世界の石油需要の増大とともにドル需要も増えた。

しかしこの構図は揺らいできた。サウジはイスラエルやイランとの関係をめぐり、米オバマ政権の外交に不満を募らせている。国内では反政府運動が収まらず、万が一現政権が倒れれば過激なイスラム教徒が同国を制し、石油でドルを支える仕組みは終焉を迎えるだろうとカツサは述べる。

カツサは米国に対抗するプーチン・ロシア大統領の戦略を詳述する一方で、こう指摘する。「仮にロシアと中国がドルへの挑戦を始めなくても、プーチンが何もせずぼんやりしていたとしても、アメリカは自らのドルの洪水に溺れることになる」

今年6月、ロシアの経済フォーラムにサウジが四年ぶりに参加し話題となるなど、両国は急接近している。世界が距離をおき始めた米国に日本だけが忠義立てしても、良いことはない。

(2015年7月、某ミニコミ紙に寄稿)

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